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NHKのネット受信契約のUX案がユーザーを騙す「ダークパターン」に陥っているという指摘

NHKでは、改正放送法に基づき、2025年10月1日から、これまでのテレビ・ラジオの放送に加えて、あらたにインターネットを通じた番組の配信などが必須業務となります。

NHKはそれにともなう広報活動に熱心で、9月には一部のメディアに対して、必須業務として行なうインターネットサービスのイメージ仮案を公開し、いくつか記事も出ています。

そんな中、ITメディアが、この「仮案」の問題点を検証し、NHKへの取材をもとに、そのUXがいわゆるダークパターン(ユーザーの判断を誤らせるインタフェース)に陥っているのではないか、と厳しい指摘をしています。

この記事によると、たとえば、ユーザーがNHKのコンテンツを見ようとした際、Webブラウザ上に「ご利用動向の確認」が表示されます。この画面で「同意して利用する」ボタンをクリックした人は、これまでのテレビ放送でいう「テレビを設置した状態」となり、契約義務が発生します。

この時点では、契約の詳しい内容をユーザーは知ることができていません。にもかかわらず契約義務が発生するというのも、首をかしげる話です。そのうえで、その内容についてこう指摘します。

 「ご利用動向の確認」の文章には“契約義務”といった文言は見当たらず、その説明もない。ユーザーは約款(放送受信規約)なども確認していない。ここでは契約義務が発生するだけで、契約自体は後で行う手順になっているためだ。これではボタンをクリックすることの重要性を利用者は全く理解できない。

後編では、解約にしにくさにも、ダークパターンの疑いがあることを明らかにします。

NHK側は取材に対して、「誤解が生じないものにすることが重要」とはいうものの、 ダークパターンという指摘そのものには、正面からの回答をしませんでした。

この記事を読んで、この「仮案」やそれに関する資料をググってみたのですが、検索にはひっかかりませんでした。NHKや総務省のサイトも探してみたのですが、見つかりませんでした。NHKはよりわかりやすい形で国民に示し、こうしたフィードバックを得ていくことは重要ではないでしょうか。

NHKのネット業務の必須化は国民的な関心事でもあります。今回のような指摘にどう対応していくかも含めてNHKの国民への向かい方が問われているともいえます。

NHKのデジタルへの取り組みを巡っては新聞協会や民放連などが盛んなロービーングをし、政治アジェンダにしてきましたが、国民は蚊帳の外でした。一方、メディアとしてユーザー目線から課題を指摘する今回の記事は、NHKの国民への姿勢という、より本質的な問題をつきつけています。(瀬)

このコラムは、あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしいという方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツなどをおすすめしています。