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告発文書がなぜ「公益通報」と言えるのか、「情報漏えい」とする鹿児島県警の主張をくつがえす【緊急イベントリポート④】

鹿児島県警の本田尚志・前生活安全部長(60)が内部文書を漏えいしたとして、国家公務員法違反の罪で起訴された事件をめぐり、スローニュースは緊急トークイベントを6月24日に開催しました。

登壇したのは、告発文書を受け取った札幌市のライター小笠原淳さん(55)と、警察の強制捜索を受けた福岡市のニュースサイト「HUNTER(ハンター)」代表の中願寺純則さん(64)、公益通報(内部告発)に詳しいジャーナリストで上智大教授の奥山俊宏さん、調査報道グループ「フロントラインプレス」代表の高田昌幸さん。そして、司会はジャーナリストの長野智子さんです。

4回目は、本田前部長の告発は「公益通報と言えるのか」について、県警の理屈をひっくり返す説明を、奥山さんが詳しく述べます。

構成:スローニュース 岩下明日香


公益通報なのか、情報漏えいなのか

スローニュース熊田 今回の報道をみていると、公益通報と言えるのか、あるいは県警が言うように情報漏えいなのか、というので両論併記みたいな報道が目立ちます。この点はどうなんでしょうか。

奥山 公益通報者保護法のたて付けの中で公益通報に該当する内容が、小笠原さんに送られた文書の中に一部含まれています。また、それに当てはまらない部分についても、正当な内部告発といえる内容が含まれていて、それらが混在しています。私はそのように思っています。

野川本部長は6月21日、迅速に行われなければならない捜査の基本に欠けるところがあったとして、警察庁から訓戒処分を受けました。そういう外形的な事実関係(枕崎署員がトイレ盗撮の犯人である可能性について昨年12月に報告を受けた際、警察職員を容疑者とする捜査は本部長指揮とするのが通例であるのに、野川本部長はその通例を逸脱して、県警本部から捜査員を応援に出すこともせず、よりにもよって容疑者が現に勤務する当の枕崎署に捜査をゆだね、他方、「刑事事件として立件するまでの間に同じようなことをさせてはならない」と考え、研修を意味する「防止の教養」を指示し、容疑者に証拠隠滅の機会を与えようとしたのも同然の初動だったうえに、さらにその後も5カ月近く、何の報告も枕崎署に求めず、当の容疑者を「適材適所」で通常の人事異動の対象とし、事件捜査をほったらかしにした経緯)を前提に考えれば、鹿児島県警において犯人隠避を組織的になしていると疑わざるを得ない状況が3月下旬当時あったと思います。

奥山俊宏さん

したがって、枕崎警察署員の盗撮容疑に関する前生活安全部長の内部告発については、犯人隠避が本部長の指示で組織ぐるみで行われていると信じるに足る相当な理由がある。組織のトップが関わっている犯人隠避の疑いですから、内部通報では不利益扱いを受けると信じるに足る相当な理由がある。警察不祥事の報道に実績がある小笠原さんに手紙を送れば、明るみのもとに出して、是正への力になるだろうと考える相当性もある。こうした状況からすると、枕崎署員の容疑に関する内部告発は、公益通報者保護法が保護しようとする公益通報になると思います。

鹿児島県警は、小笠原さんに送られた文書のなかに、公表を望んでいないストーカー事件の被害者の個人名や年齢が記載されていたとして、公益通報にはあたらないと主張しています。

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