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「その資料を所蔵しているかどうかは言えない」と県立図書館が『佐渡鉱山史』を存在さえ隠したい理由

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「あるかないか言えない」 世界遺産めざす佐渡金山でお蔵入りの名簿

公立図書館で、「所蔵しているかどうかを答えられない」、「答えられないという理由も言えない」という歴史資料があるというのです。

にわかには信じられないような対応の理由を追いかけて、世界遺産を目指す佐渡金山の暗部にたどり着いたのが、朝日新聞・田玉恵美論説委員のこのコラムです。

きっかけは、来年の世界文化遺産登録をめざす佐渡金山について新潟県立図書館で調べていたときでした。検索したところ、かつて鉱山会社が提供した「佐渡鉱山史」を所蔵しているとの記述があったので図書館に聞くとこんな奇妙な回答だったのです。

「これは、所蔵しているかどうか、お答えしないことになっているんです」

ぎょっとする回答ですよね。

 なぜこの資料があるかないかすら言えないのか。その理由を訪ねても、「それも言えない」という答えでした。

ほかにも、佐渡鉱山で働いた朝鮮人労働者の名簿を図書館が所有していることがわかりました。それについても「あるかないかも答えられないし、その理由も説明できない」ということでした。

調べていくと、佐渡金山の世界遺産登録を巡って、「佐渡金山は朝鮮人強制労働の現場ではない」という主張に配慮した動きがあることがわかってきます。

公文書の記録において重要な役割を果たす図書館が、資料があるかないかさえ答えられないというのは、きわめて異常です。まして、その理由さえ答えられないというのはおかしな話です。

その背後に政治的な思惑や、あるいはそれに巻き込まれたくないという判断があるとしたなら、図書館の役割を放棄しているともいえます。

図書館法では、図書館の役割を「図書、記録その他必要な資料を収集し、整理し、保存して、一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーシヨン等に資することを目的とする」と定めています。

世界遺産登録を目指す一方で、歴史に対する背信が行われているのは、本末転倒もいいところです(瀬)

(朝日新聞2023年12月2日)



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