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統計の手法で談合企業240社を特定した研究者、「談合してますね」と企業に送り付けて反応をみた結果……

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ソフトな規制と罰則併用を 談合はなくせるか

これは驚きました。東京大学の川合慶教授と、京都大学の中林純教授による寄稿なのですが、国土交通省発注の入札について、統計の手法で高い確度で談合をしていると判断できる240社を特定したのだとか。

談合しているかどうかについては、よく発注側が決める予定価格に対して落札金額が占める割合=「落札率」を見て怪しいかどうかを判断するということが言われていますよね。日弁連の報告書では、98、99%だと疑わしいとしているほか、全国市民オンブズマンは、95%以上なら談合の疑い極めて強く、90%以上は談合の疑いありとしています。

しかし今回の分析はそんな単純なものではないのです。手法を説明した部分を引用します。

勝敗が事前に談合で決まる場合、僅差の入札を多数集めても、特定の企業が勝ち続け、別の企業が負け続けるというパターンが生じ得る。換言すれば僅差の勝者・敗者間に系統的な差異があれば、それは談合の存在の証拠になる。

そのうえで、企業の「技術評価点」「評価値」に着目し、勝者と敗者の技術評価点の差異が偶然では説明できないほど大きい企業を割り出したのです。

そしてさらに凄いのは、割り出したことにとどまらず、その中から半数の談合グループをランダムに選び、各社に分析結果の書面を送って、どういう反応をするのかを見たというのです。

書面を送付した企業は、やはり入札行動を変えていたのだとか。ただ、改善したのかというと、「検知を逃れるために入札パターンを変化させたと考えられ、談合が組織的、かつ確信犯的に行われている」と指摘しています。

そのことから、企業の自浄作用だけでの談合防止は効果的ではないと結論づけています。とはいえ、公正取引委員会による積極的な摘発もリソースを考えると期待しにくく、結局は両者の中間の手法が落としどころだと提言しています。

それにしても統計で談合企業を割り出せるとは、驚愕です。これを利用して警鐘を鳴らすことは十分にできると思われ、当局もこうした手法を採用してみてもいいのではないでしょうか。(熊)

(日本経済新聞 2023/12/13)

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