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「先生に止められた」県議の圧力？でネット公開遅れ　福岡県の政治資金報告書、全国44番目に

先日の「今日の必読」でも、政治資金収支報告書の原本をネットで公開していないのが、新潟県だけになったという記事を取り上げました。

でも去年までは、石川県、広島県、福岡県の3県もネットでの公開をしてしなかったのです。なぜ公開ができなかったのか、理由を尋ねると「報告書をデータ化する人手が足りなかった」というのが、県側のよくある説明。

ところが、西日本新聞が福岡県の内部文書を入手したところ、そこには「〇〇先生に止められた」「県議団が止めている」と、地元の議員からの「抵抗」があったことが明記されていたのです。

やはり議員にとっては「都合の悪い文書」ということなのでしょうか。

最後に残った新潟県については国会議員の関係団体は来年にはネット公開することになりましたが、県議の団体は未定。新潟日報はやはり、「県議会最大会派の自民党内で反対意見があり、調整がつかない」と明らかにしています。

企業献金、党支部に34億円　国会議員430人が代表　抜け穴指摘も

議員の皆さんは追及されることを心配しているようですが、政治資金収支報告書というものは、入手できたからすぐにそこから不正が発覚するというものでもありません。とにかく膨大だからです。

とはいえ、人力では無理でも、AIの力を借りれば大丈夫なはず。朝日新聞は、2万枚の報告書を画像解析（OCRをかけたってことでしょうね）して、政党支部への企業・団体献金が2021年分で約34億円にのぼったと報じています。

ただこの話、単純な献金の集計なので、「人力でも頑張ればできないことはない」のであって、AIの使い方としてはどうなのかなと。あくまでAIの利用はOCRに関する部分だけということなのでしょうか。

それに「ルールを改めるべきだ」というオピニオンの材料にはなっていますが、政治家の側に影響があるようなスクープにはなっていませんよね。

こうしたAIを利用した報告書の解析、NHKもすでに6月に実施していて、そちらは約4万枚を解析しています。ただ、その結果も、現職の議員関係団体の総収入額と、どんなところからの献金なのかをまとめたもの。集計の手間を省く、という使われ方がせいぜいです。

今年はいま話題になっている、自民党の派閥の団体への献金の不記載を明らかにするために使っているようですが、本格的な「AIによる分析」の導入にはまだ時間がかかりそうです。

迂回献金やトンネル献金を見破るためのロジックや異常値の検出、作れるはずなので、ぜひ。

さて、ではこの分野の取材、今後は朝日新聞とNHKの独壇場になってしまうのかというと、そんなことはないでしょうね。やはりどういう視点で読み込むのかということや、取材経験や情報がものをいう世界ですから。

そして大前提となるオンライン提出を実現させれば、そもそも画像解析なんて手間はいらなくなるはずなのです。

他のメディアの方、ネット公開も大事ですが、ぜひデジタルでの提出を推進するための報道もしていただければ。

自民党有力派閥の事務担当者が証言「パーティー券で裏ガネ」ひとりで1回2000万円つくった驚異の錬金術がヤバい

一方で、やはり政治とカネの取材はヒューミントの世界だとも思わせるのが、現代ビジネスのこちらの記事。派閥の担当者がパーティー券収入の内情を証言しています。どこの派閥の話なのか、まだ匿名なのは残念ですが、事が動いたら詳しく明かすのでしょうか。

と、ここまで書いたところで、文春から凄いスクープが。

安倍派「23億円」裏金作りを暴く！《特捜部が狙う“萩生田の舎弟”》

やはり問題は、派閥のパーティー券をもとに捻出される裏金であると。違法寄付の疑いがある安倍派の議員のことまで具体的に書いていますね。確かにこれが本当なら大問題です。

自戒を込めてですが、政治とカネの「本丸」の部分には、まだメスが入った報道はないのではないか、と想像しています。ただ、取材の技術もオープン化も、少しずつでも前進していると思いますので、ぜひこの流れを進めていければと思います。（熊）

（西日本新聞　2023/11/27）
（新潟日報　2023/11/28）
（朝日新聞　2023/11/24）
（NHK　2023/11/24）
（NHK政治マガジン　2020/11/28）
（現代ビジネス　2023/11/27）
（週刊文春　2023/11/29）