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女性自衛官に抱きつく姿を「見たことない」と証言した直後に「記憶はあります」と一転、性暴力裁判での証言の実態

スローニュース 熊田安伸

「女性隊員に抱きついていたところを見たことは」
「ありません」
「見たことがあるという供述調書がありますが」
「あの~あると思います」
検察官の追及を受けると転じていく証言。9月25日に福島地方裁判所で開かれた裁判の一幕だ。
陸上自衛隊郡山駐屯地に勤務していた元自衛官の五ノ井里奈さん(24)への強制わいせつの罪に問われている木目沢佑輔(29)被告への被告人質問。こうした裁判の内容は、メディアでは報じられていない。証言の詳しい内容を、スローニュースは今回も明らかにする。

(前編はこちらから)


これまでの被告や証人と食い違う証言が次々と

在宅起訴されているのは、渋谷修太郎(30)、関根亮斗(29)、木目沢佑輔(29)の3被告だ。2021年8月3日、北海道矢臼別演習場の宿泊施設で五ノ井さんに格闘の技をかけるとして押し倒し、腰を振るなどのわいせつな行為をしたとされる。いずれも技をかけたことは認めているが、わいせつにあたる容疑を一部否認している。

25日は木目沢被告に対する被告人質問が行われた。上官であるX1曹に技をかけるよう指示され、4、5回ほど断ったあと「命令だから」従ったと説明した。

木目沢被告:(午後7時~8時の間に)宴会がはじまって、しばらく経ってからX1曹はきました。

弁護人:208号室に入ってきたX1曹はどんな様子でしたか?

木目沢被告:X1曹はすでに酔っぱらっている状態でした。RVボックスに足をつまずいたり、ろれつが回っていなかったりするような状態でした。X1曹と五ノ井さんは柔道の話をして、「体育学校に行きたい」という五ノ井さんに対して、X1曹は「今の膝の状態で行けるわけがないだろう」と言っていました。

ろれつが回らないほど泥酔していた上官、その指示に従ったということなのか。木目沢被告は、チューハイ1缶を飲んだものの、酔った状態ではなかったという。

木目沢被告の証言によると、はじめに木目沢被告が五ノ井さんに技をかけ、その後に部屋に入ってきた関根被告と渋谷被告が続けざまに五ノ井さんに技をかけたという。その様子を、カーテンにくるまりながら隙間から見いていたと語った。室内が禁煙のため、廊下に煙が流れて注意されないよう、カーテンで遮断して窓の外に煙が出るようにしていたということだ。

裁判官:渋谷被告が技をかけた時の状況ですが、技をかけた時かその後か、渋谷被告は何か声を発していましたか?

木目沢被告:覚えていないです。

裁判長:カーテンの所でくるまりながら、渋谷被告と関根被告のことを見ていたということですが、その2人の順番はわからないということですか?

木目沢被告:順番は、関根、渋谷の順番だと思うんでけど……。

食い違いを指摘され「取り調べを毎日受け、記憶の改ざんが起きたかなと」

検察官からも、順番について質問が出た。別の被告やこれまでの証人の話とずいぶん食い違うからだ。

検察官:あなたの認識だと、あなたが最初に首ひねりをかけて、その後に関根被告、次に渋谷被告ということでしょうか?

木目沢被告:2人の順番については自信ないですが、自分が最初だと思います。

検察官:渋谷被告が初めに技をかけたと話しているのは、五ノ井さん、元上司、証人A、証人C、渋谷被告本人がそう認識している。あなたの記憶とはずいぶん異なっているのです。異なっているのはどうでしてか、心当たりはありますか?

木目沢被告:いいえ、自分は最初から208号室にいて、自分の技からはじまったという記憶なので、他の人たちが言っていることは、その人の記憶なんだなと思います。

検察官:他の人と証言が食い違う具体的な理由があるのか、という質問です。

木目沢被告:ああ、それに関して自分はちょっとわからないです。

検察官:証人Aの証言を聞いていましたね。証人Aは、あなたと関根被告が「次どっちがやる」という相談をして、関根被告、あなたがX1曹のジェスチャーのもとやったという話がありました。そのやり取りがあった記憶はありますか?

木目沢被告:全くないです。

検察官:そうすると、どうして目撃者からそういった証言が出たと思いますか?

木目沢被告は、頭のそばで片手を揺らしながら答えた。

木目沢被告:自分は取り調べを何カ月か毎日受けて、記憶の改ざんというか、イメージでそういう風に作り上げられるものだなと思いました。その証言をした彼らも同じ状況なのかなと、思いました。

検察官:五ノ井さんの供述とも大部分違っているところがあります。五ノ井さんは腰振りをされたと言っていて、証人Aも腰振りをしていたという証言でした。五ノ井さんがそういった証言をするのは、五ノ井さんの間違いだと、五ノ井さんが嘘をついていると思っているのですか?

木目沢被告:記憶が曖昧なんじゃないかなと思っている。

検察官:あなたがわいせつな行為をしたかどうか、あるかないかという話ですから、曖昧という話では片付けられない。あなたは捜査段階では、五ノ井さんのことを「訓練に参加したくない、家に帰りたいから、誰かからかセクハラを受けて、より多くの人から受けたことを言えば、家に帰らせてくれる可能性があると思って、嘘を言っていたのではないか」と供述していましたね?

木目沢被告:はい。

検察官:五ノ井さんが嘘をつていていると思っていたんですか?

木目沢被告:はい。

検察官:五ノ井さんは命を削って生活し、裁判中にも倒れました。それでも五ノ井さんは嘘をついているとおっしゃるのですか?

木目沢被告:自分も同じく命を削っています。自分も家族がいて、大変な状況ですけど働いています。なので、命がけで闘っているのはお互い様だとは思います。

ここからは会員限定です。他の証言との食い違いや、取り調べ段階での供述調書との矛盾をいくつも指摘される被告。やがて女性隊員への性加害を「見ていない」と答えた直後に一転して認める状況も。詳しくお伝えします。

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