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英国全土に暴力・騒乱を巻き起こしたフェイクニュースの仕組みを検証したBBCの「ファクトチェック」

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。

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【検証】 英騒乱のきっかけは……偽情報を投稿したのはどういう人たちか

英イングランドの小さな町サウスポートで7月29日、ダンス教室で3人の女の子が刺されて亡くなった事件は、イギリス全土の町や都市への騒乱に広がりました。

事件直後に、犯人がイギリスに到着した亡命希望者だという間違った憶測やイスラム教徒だという根拠のない噂がSNSを中心に広がり、それが極右勢力や反移民感情によってあおられ、暴動や暴力事件、モスクやホテルへの襲撃に発展したのです。

BBCがなぜこの偽情報が広がったのか、どこが発信源なのかを検証しています。その結果、デマや憶測に火をつけたのは、一見、放送局のサイトのような雰囲気を漂わせたネットメディアであることをつきとめています。

さらに、暴動が各地にどうやって広がったのか、それをあおったインフルエンサーはどんな役割を果たしたかについては、こちらが詳しいです。

一方で、Xを所有するイーロン・マスク氏はフェイクニュースを拡散、暴動を煽るような投稿をしたことが問題になっています。

プラットフォームの問題がここでも表面化しています。彼らにフェイクニュースや暴力を扇動するような情報のコントロールを自律的に期待するのは、残念なことにむなしい状況です。

日本でも、誤情報やフェイクニュースの増加は社会課題になっています。これに対し、一部の新聞はネット空間をふくめたファクトチェックに取り組んでいますが、まだまだ少ないのが現状です。

新聞やテレビのような調査力、影響力のあるメディアこそ積極的に、誤情報のファクトチェックに取り組むのは有効です。もちろんメディア同士の相互チェックも含めてです。

ファクトチェックの担い手は育っていないとして、政府がその支援に乗り出す方向を示していますが、その是非については議論があります。その前に、まだまだ既存のジャーナリズムメディアにもできることがあると感じます(瀬)