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「自民派閥還流マネー」検察の捜査の筋に依らない独自のスクープ、実は地方発でこんなに出ています

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。

さて、自民党の派閥の政治団体からパーティー券収入がキックバックされていた問題、政界を揺るがしていますね。メディア各社も報道合戦に躍起です。

ただ、どうしても検察の「捜査の筋」を追うような報道が目立ちますよね。独自の調査報道というより、「関係者」クレジットのいつもながらの報道が多い。もちろん、そうした報道の中にも重要なものもありますが、そういう文脈とは全く別に、優れた政治とカネの報道が地方から発信されています。

今回はそんな報道をまとめてご紹介します。

岸田派の政治団体からの寄付金134万円記載せず 小鑓参院議員が代表の自民党支部

以前から「調査報道 政治とカネ」というシリーズで調査報道を続けている京都新聞。多くのメディアが騒ぎ始める前(赤旗の最初の報道は別ですよ)の9月には、岸田派の小鑓隆史参院議員が代表を務める自民党支部が、派閥の政治団体からの寄付金134万円を収入として政治資金収支報告書に記載していなかったことを報じています。

書いたのは、報道実務家フォーラムでも各社の記者を前に「政治とカネ」の講師をされた峰政博さん。さすがです。

自民党滋賀県連、パーティー収入60万円を未記載 識者「派閥の問題と同じ構図だ」

更に良い視点なのは、自民党の県連レベルでもパーティー券収入が記載されていないケースがあり、構造的には派閥で起きている問題と同じことだと指摘している報道ですね。

滋賀県連が、当時の事情を知る職員がいない、としながらも、裏金は否定するというのは、理屈としてちょっと不可解だと感じました。

自民北海道連で還流慣例化 パーティー券の超過販売分

同じように構造的な問題を指摘したのが、北海道新聞の報道。自民の北海道連で、パーティー券収入の還流が慣例化していることを指摘しています。

この報道、清水拓也道議が代表の政党支部で5万4000円の収入が記載されていなかったことから明らかになったもの。不記載の金額が小さいことを理由に、追いかけ報道をしていないメディアもあると聞きますが、いやそういう問題ではありませんよね。こういうカネを見えなくする構造こそが問題であって、金額の多寡は関係ないでしょう。その判断はセンスが悪いと申し上げざるを得ません。

小野田紀美議員が代表の自民党支部 200万円の寄付記載せず

NHKの岡山放送局も気を吐いています。署名はありませんが、間違いなく全国有数の政治とカネに精通したスクープ記者、安井俊樹さんの仕事でしょう。

小野田紀美議員が代表を務める自民党の支部が、派閥から受け取った200万円の寄付を記載していなかったというもの。まさに、一連の疑惑のど真ん中に投げ込むような報道ですよね。

時期的に考えると、今回の検察の捜査のきっかけになっている告発状には含まれていないものになるわけで、独自のスクープです。

ところがこれ、NHKは全国放送で扱っていないのです。もし、捜査当局の「筋を追う」ことに沿わない記事は扱わないという判断だとしたら、それはいかがなものかと思ってしまいますが……。さらに、内閣府政務官である平沼正二郎議員の政治団体の不記載も、スクープでしたが全国放送になっていませんでした。

自民党県連の政治資金パーティー 一部支部が還付金を記載せず

NHKの岐阜放送局も、自民党県連が開いた政治資金パーティーで、4支部がパーティー収入の一部を返してもらいながら記載していなかったことを独自に報じています。これも、管中(愛知・岐阜・三重の3県での放送)にしかなっていませんね。

岡山の記事はどちらも、私がNHKにいた時なら間違いなく全国放送していたレベルのものですし、岐阜の記事も構造的な問題であり、不記載の合計額が2200万円を超える多額なので、私なら全国放送という判断をしたと思います。本当に残念です。

もはや「不記載」は「ミス」では済まされない

例えば上場企業が公表している有価証券報告書で、こうした収入の金額が抜け落ちているようなことがあれば、大問題になりますよね。金融商品取引法違反になるケースだってあるでしょう。

「不記載」はともすると、「政治資金収支報告書を訂正します」で済まされてしまうことがありましたが、そもそも政治資金規正法違反ですからね。「ミスでした」では済まされない事態なのです。

ただ、今回の一件で、今後はそうはできない流れになってきました。注目しています。(熊)

※自分たちもこんな政治とカネの調査報道を出しているよというメディアの方、お知らせください。

(京都新聞 2023/9/30,12/13)
(北海道新聞 2023/12/14)
(NHK岡山 2023/12/14)
(NHK岐阜 2023/12/11)

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