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「取材規制」は逆にメディアの継続的で力強い発信を招く…山梨県のケースで見えたこと

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山梨県とメディアの戦いに出口見えず、「取材規制」への抗議に当局は〝事実誤認〟の反論

まったく理解しがたいことが起きています。

まずはその前提の問題から。自民党のパーティー券収入の還流・裏金化事件に関連して、二階派でもある山梨県の長崎幸太郎知事が派閥から受領した1182万円を、政治資金収支報告書に記載していなかったことが明らかになりました。

長崎知事は「意識的な不記載ではなく、預かり金的なものとして認識をしていた」と弁明しましたが、市民オンブズマンの活動をする県民らが政治資金規正法違反の疑いで告発する事態に。

2月17日は知事就任6年目という節目で、山梨県政記者会所属の新聞社、通信社、そしてテレビ局が5日からインタビューを予定していました。事前に質問項目を渡していたところ、広聴広報の担当者から「政治資金規正法の問題を質問から外してくれ」と要請されたり、「政治資金規正法の質問を削除しなければインタビューに応じられない」といった趣旨の通告がされたりしたというのです。とんでもない報道への圧力ですよね。

記者クラブが「取材規制だ」と抗議すると、なんと県は「県政に関する内容以外の質問は定例会見で質問するよう調整を提案し、この点を理解いただいたうえで取材をしていただいたものと理解する」という見解を出し、県議会でもそういった説明をします。

これにはさすがに記者たちも、「もはや妄想レベル」「事実誤認じゃなく完全に虚偽、捏造という次元だ」と怒り心頭です。

実際、地元民放のテレビ山梨(UTY)は、質問削除の要請に応じないことを明確にしたため、インタビューは実施されませんでした。

しかしそこで黙っていてはメディアではありません。UTYさん、「裏金の定義を教えてください」などと自明のことを逆質問してうやむやにしようとする長崎知事に対し、「帳簿で管理されていないカネは裏金」と指摘する元大阪府知事の橋下徹氏を引っ張り出して「県庁の職員が使途不明金を持っていることが発覚したら『これは使途不明のまま預かっただけです』という言い訳を許すのか」というインタビューを発信。

さらに自民党籍を持つ長崎知事の実態の把握を党として考えるとした岸田首相の国会での答弁や……

上記で紹介した市民グループの告発状が、甲府地検から東京地検に移送されたことなどを細かく報じていきます。

政治資金の不記載はそもそも「ミス」ではなく大きな問題ですが、当局による「取材規制」は同様に深刻な問題です。

「取材規制」が、逆にメディアの継続的な報道につながることを示した、後に残る事例になりそうです。(熊)

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