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「半数以上の市民が自宅に戻れず」「猛暑の中で汗だくの車中泊」能登半島の被災者の過酷な現状を伝える

今年の元日に発生した能登半島地震。現地の状況を伝える報道によって、半年以上が経過しているというのに、被災地の過酷な実情が見えてきています。今回はそうした報道をまとめてみました。

能登半島地震から半年 ビッグデータからみる能登半島地震の避難状況

7月24日に発表されるや、すぐにいくつかのメディアが取り上げたのでご覧になった方もいるでしょう。LINEヤフーによる位置情報のビッグデータ分析レポートです。

一番に目を引いたのはやはり「輪島市・珠洲市居住推定者の自宅復帰率」でしょう。6月末の段階で、自宅に復帰できたと推定される人は46.4%。半数にも満たないのです。しかもこの数字、4月あたりから動いていません。

いかに住宅の再建問題などが深刻なのかが見て取れます。多くの人は金沢市などに移動している状況が見て取れます。

NHKが発災半年に合せて6月に行ったアンケートでも、被災者が困っていることとして最も多く挙げているのが、やはり「居住環境」についてで、91%にのぼっていました。このうち、「家が壊れて住めない」が50%と、LINEヤフーの分析結果と同じ様な内容を示していました。

複数回答で尋ねていますが、このほかにも「壊れた家の撤去のめどがたたない」が32%、「仮設住宅の環境が悪い」が23%などとなっています。

被災地で汗だくの車中泊を強いられる…地震から半年経ったのに 仮設にも賃貸にも入れない「制度の落とし穴」

では自宅に戻れない被災者はどうしているのか。今年の過酷な猛暑の中、車中泊を余儀なくされている被災者がいると伝えているのが東京新聞の報道です。

男性は住んでいたアパートが「準半壊」となりました。ごったがえす避難所での感染症をおそれて車中泊に。アパートの修復を待っていたら取り壊しとなってしまったため、再び避難所に身を寄せようとしても「新規入居はできません」。仮設住宅を申し込もうとしても「半壊以上の人が対象」で、いまだに車中泊をしているというのです。

行政は「新しいアパートを探してくださいとしかいえない」としています。しかし今の被災地には、そうそう入居できる賃貸物件はありません。

確かに仮設住宅はまだ十分に数が足りていませんが、どうにか個別の事情でなんらかの対応をする方法はないものでしょうか。

「準半壊」の認定で困っている人は他にもいます。自宅が被災して戻れないという障害者の姿を追ったのが、NHKの「バリバラ」です。

可能性が低くてもなんとかならないかと、珠洲市のホームページで仮設住宅に申し込んでみますが、視覚障害があるため、今のインターフェースではなかなか手続きができません。

このほかにも、避難先でこれまでにも増して不自由な暮らしを余儀なくされている障害者の暮らしを追いかけ、課題を明らかにしています。

「十年後の未来が来た」孤立経験した集落で“全農家が田植え断念” 生活の再建は

輪島市の渋田町という集落では、自宅に戻れないだけでなく、田んぼも使えなくなってしまい、全ての農家がことしの田植えを断念してしまったとCBCが伝えています。

災害は集落の過疎化を早めると言われていますが、「十年後の未来が来てしまった」と住民も嘆いています。

被災地で活動しているNPOによると、自宅に戻れない被災者への支援は、むしろ手薄になっていて、「支援のミスマッチ」どころか「アンマッチ」という状況になっているといいます。

中日新聞のポッドキャストでは、避難所で暮らす人の生の声を伝えています。食事の支援さえも十分でない状況を、被災者は訴えています。

能登半島を「復興モード」と言う人がいますが、まだ「発災モード」は続いています。そういう考え方で向き合っていかないと、十分な支援はできないのではないでしょうか。(熊)