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海や川でのレジャーの前には必ずチェックしておきたい「水難事故マップ」重大事故集中エリアも可視化

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きょうのおすすめはこちら。

水難事故マップ

朝日新聞が、2013~22年に発生した水難事故、約1万件の事故データを海上保安庁と河川財団から入手して作成たのが、「水難事故マップ」です。

海辺や河川で起きた水の事故がオレンジや黄色の点でプロットされ、クリックするとその詳細を知ることができます。重大事故が集中しているエリアは青い丸で囲まれ、注意喚起をしています。

さて、こうしたデータをビジュアル化する際、単に可視化したというだけではあまり意味がありません。

今回のマップも手掛けた山崎啓介さんたちによる前作、「みえない交差点」という交通事故マップが高い評価を受けたのには理由があります。

もちろん、身近な場所での事故が分かるという「わが事化」できるコンテンツであることも評価されましたが、それ以上にビジュアル化したことによって、「信号機がない小さな 交差点で実は事故が多発している」「名前のない交差点は事故が起きていても注意喚起の対象外になっている」ことなど、新たな「発見」があったからこそ高い評価を受けました。

では、今回のマップではどうでしょうか。

「海や川、湖などで、10年間に10人以上が死亡・行方不明になった場所が全国に7カ所、5人以上だと47カ所あった」としています。ただ、これにしても数字のまとめに過ぎません。

今回、明確になった事故集中エリアとして「岐阜県美濃市の長良川」「沖縄県恩納村の真栄田岬」などが挙げられています。この2か所については私も実際によく知っている場所なので、「そりゃそうだろう、あそこで水難事故が多発しているのはみんなよく知っているよ」なんて思ってしましました。

しかしこの記事を見て、なるほどと思いました。
『長良川も、河川敷からは川底が浅く、流れも穏やかにしか見えない。だが、中濃消防組合によると、水深5メートルになる場所があり、担当者は「潜水した消防士が体を制御できないくらい、川底に引き込まれるような複雑な流れがある」という』

そうなんです。長良川って、底が見えるぐらいきれいで穏やかで、私も子どものころ、子どもたちだけで川に入って遊ぶような場所だったんです。祖父もよく川の中に入っての鮎釣りを楽しんでいました。

でも、だからこそ、そうやって遊んでいる地元の子どもたちは、「川のここまでは行っていいけど、それ以上進んではいけない」ということを大人に聞かされたり、上級生から教えられたりして、知らず知らずのうちに把握し、警戒していました。一見、泳ぎが得意な人なら泳ぎ切れそうな川幅なので「向こう岸まで泳いでみよう」という話がたまに出ましたが、そのたびに、「絶対にあかんて!途中で飲み込まれてまうよ」とみんな全力で制止していました。

川の中には危険ラインなんて引くことができません。地元の人たちが楽しく遊んでいる場所でも、県外から来た人が不用意に川遊びをしていると、あっというまに流れに飲み込まれてしまうでしょう。そういう危険を防ぐために、このマップは一役買うかもしれないと思いました。

この夏、海や川に遊びに行く人は、ぜひ事前にこのマップでチェックしてみてほしいです。

ところでこのマップには、「船舶事故マップ」もついています。ただそちらに関しては、誰に対してどういう役割を果たすコンテンツなのかが今一つよくわかりませんでした。

この種のマップとしては運輸安全委員会が「船舶事故ハザードマップ」を提供しており、そちらの方が詳細で、実際に船を運行する人はこれを使うのではないかと思います。

今後、何らかの改良をするのか、どのような目的なのか、今度、制作者たちに聞いてみたいと思います。(熊)