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「辺野古」工事めぐる技術検討会委員に受注業者が使い道自由の「寄附金」を提供していたことを暴いた東京新聞のスクープ

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「辺野古」軟弱地盤工事にお墨付き与えた委員に230万円 受注業者から資金提供 就任前にも570万円

沖縄県宜野湾市にあるアメリカ軍の普天間飛行場。市街地の中心部にあることから、沖縄県が危険性の除去と早期の閉鎖・返還を求めています。

その移転先となっている名護市辺野古の埋め立て予定地では、軟弱地盤をめぐっての沖縄防衛局の設計変更で、国と沖縄県が対立してきました。

その沖縄防衛局の設計変更に「お墨付きを与えた」技術検討会の委員2人が、就任した2019年9月以降に、関連工事の受注業者から計230万円の「奨学寄付金」を受け取っていたと東京新聞が報じています。

ポイントは、提供されたのが「奨学寄付金」だというところ。特定の目的のためではなく、使い道が限定されていない寄付金なんですよね。だから他の分野では、一定の規制がかかっているものなのです。

原子力規制委員会は委員の選任に当たり、直近3年間の関係業者からの寄付を申告させ、公表している。国の医薬品の承認審査では、関係企業から年50万円を超える寄付を受けた委員は議決に加われない。

記事によると、寄付金を受け取った2人は情報公開制度がある大学に所属していたため、情報公開請求によって寄付の事実が判明したとのこと。ただ他の委員は制度のない大学に所属しているため本人に尋ねるしかなく、いずれも無回答だったとのことです。

国の事業に関わる決定をする学識経験者などが受け取る寄付金ついては、情報公開請求をしなくても、公表される制度であるべきではないでしょうか。

製薬業界では、医師に提供した寄付金を年に1回まとめて公表するルールがあります。それをまとめた製薬マネーデータベース『YEN FOR DOCS』も医療ガバナンス研究所が提供していて、そこで無料で調べることができます。

こちらで調べると、やはり使い道に制限のない「奨学寄付金」を誰がいくら提供されているかが見て取れます。

今回、指摘を受けた委員たちが寄付金をどのように使ったのかは、取材に回答をしていないのでわかりません。

ただ、たとえば大学病院の医師の場合、先日、話を聞いた医師によれば、「医師の場合は国際的にみて安い給料の埋め合わせだといって、製薬会社からなどの奨学寄付金で車を買うなど、私的な目的に使っている人もいる」と話していました。

こうした寄付金が十分に公開されていない状況を見るにつけ、日本はまだまだ「オープンデータ発展途上国」だと強く感じます。(熊)

(東京新聞 2023/11/12)

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