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官房機密費を陣中見舞い=候補者の選挙運動への寄付に使ったと語った河村元官房長官、これが認められるのか

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。

このところ、「官房機密費」がホットな話題になりつつありますよね。

引き金は間違いなく、石川県の馳浩知事の発言。東京オリンピックの招致をめぐり、官房機密費で国際オリンピック委員会(IOC)の委員に1冊20万円のアルバムを贈ったと発言したことです。

「全面撤回した」といいますが、なにをどう撤回したのか、説明がないのでよくわかりません。そもそも、IOCの倫理規定から見ても問題ないと判断したのであれば、「政府として必要な機密費の使い方だった」と堂々と主張して、国民に適切だったかどうかを問うてみてはどうでしょうか。

などと思っていたところ、とんでもない「機密費の使い道」に関する記事が発信されました。

官房機密費「陣中見舞いにも」 河村建夫・元官房長官が明かす

かつて官房長官として、機密費を使える立場にあった河村建夫氏。朝日新聞がインタビューしたところ、機密費の使い道として、「陣中見舞いとして持って行くことがあった」と明言したのです。

「陣中見舞い」って候補者の選挙運動のための寄付に当たるものですよね。国のために、どうしても使途を明かせない理由で使われるはずの機密費。特定の候補者の選挙に使われているとしたら、これは大きな問題ではないでしょうか。それに年間10億円超にのぼるわけですから、選挙目的で誰に渡したとしても、政権与党が圧倒的な資金力を持つことになってしまいます。

朝日新聞がなぜ、数多いる官房長官経験者の中で、なぜ河村氏にインタビューしたのか、その理由はわかりませんが、2009年に自民党から民主党に政権交代した際、河村氏から官房長官を引き継いだ平野博文氏が、機密費の残高がゼロで、「カラッポだった」と発言したことが当時、話題になりましたよね。

政権交代のきっかけになる衆議院選挙の2日後に、機密費2億5千万円を内閣府に請求していたということが明らかになっています。通常なら月1億円程度のところを、です。

こうした機密費の引き出しが、公文書で明らかになったことが一度、ありました。

官房機密費の支出 9割が領収書不要 運用実態は不透明

官房機密費に関する情報公開請求をめぐり、2018年に最高裁が一部開示の判決を出したのです。原告に月ごとの支払額などを記した文書が交付され、官房長官が裁量で使えて領収書もいらない「政策推進費」が9割ほどを占めていることが明らかになりました。

そして、やはり2009年9月の河村官房長官時代の2億5000万円が突出していることも判明しています。

ただ、民主党政権の時代には、機密費の使い道を過去にさかのぼってまで公開することも検討されましたが、結局見送られ、それから公開を進める動きは出ていません。

一方で、過去の官房長官が、その秘密のベールの一端を明かしたこともあります。

「官房機密費」の謎

まずは1993年に自民党の河野洋平氏(リンクを張った記事では「前任者は河野太郎さん」となっていますが、間違いだと思います)から引き継いだ、新党さきがけの武村正義氏。TBSの時事放談で、当時の様子を語っています。官房長官の部屋に「デカい金庫」が置いてあった時代です。

「一番印象に残っているのは、官房長官の部屋へ入って椅子に座った途端に、官邸にいる参事官の会計課長がやってきまして、いわく年間何億ありますと、月に割ると約1億円位ですと」

そのうえで、「何の制約もなく、戸惑いながら使った」と告白し、議会対策費、国会議員の餞別、議員連盟、NGO、学者の研究会、マスコミにも出していたと明らかにしています。慣例で毎年出しているようなものもあったと語りました。

官房機密費「月7000万円」 野中広務氏の告白 ~過去の紙面から

1998年から2000年にかけて官房長官を務め、実力者といわれた野中広務氏も、使途の一端を毎日新聞に具体的に明らかにしています。

  • 国対委員長が国会対策に使うために月500万円

  • 首相の部屋に1000万円

  • 参院幹事長室に定期的に

  • 政治評論家へのあいさつ

政治評論家は機密費をもらっておいて、どの口で評論するのでしょうか。そして1人だけ、田原総一朗さんが突き返してきたというのが痛快です。

一方で、こんなトンデモない人もいたようです。

政治家から評論家になった人が小渕(恵三首相)さんに「家を建てたから3000万円、祝いをくれ」と言ってきたときは「絶対だめだ」と止めた。

ところでこの記事、2010年に掲載したものですが、今回の騒動を受けて、改めて毎日新聞が掲載したもの。こういう取り組みはいいですね。

河村元官房長官の発言を機に、また事態は動くのでしょうか。いずれにせよ、過去には明らかに国民の納得が得られないような使い方もされているようなので、全面ベールに包んだまま、というのでは、もう説明責任が果たせないのではないでしょう。(熊)

(石川テレビ 2023/11/30)
(朝日新聞 2023/12/4,2009/11/21)
(日本経済新聞 2018/3/20)
(TBS時事放談 2009/11/29)
(毎日新聞 2023/11/30)

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