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「育休退園」2人目を生むと上の子は保育園を出なければならない制度は「少子化に逆行」か…生み控えにさえつながるケースも

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。

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所沢市が育休退園制度を廃止 「市長が変われば生活が変わる」新市長の小野塚氏、子育てしやすく転換

新しい所沢市長の就任会見が話題を呼んでいます。第2子のために育休を取ると、上の子が強制的に保育園を退園させられる「育休退園」の制度を廃止すると宣言したのです。

この制度、待機児童への対策のために、所沢市は2015年に導入していました。しかし、「保護者にとっても子どもにとってもいいことがない」などと大きな議論が起き、所沢市は複数の世帯の保護者から行政訴訟を起こされて、一部は退園の執行停止が認められていました。それでも制度の運用は続けられ、2022年度には105人が退園したということです。

育休中の保育園はダメ?「在園可否」自治体リスト

この制度、導入している自治体がどれほどあるのか。東洋経済オンラインが首都圏の主要市区や政令市の100の市区を対象に調査を実施して報道しています。

この報道の時点で所沢市は「訴訟を起こされたのに相変わらず100市区の中で一番厳しい対応をとっている」とのことでした。一方で、「期間や年齢にかかわらず無条件に上の子の在園を認める自治体も100市区中23市区に上っており、全体に条件は緩和される傾向にある」といいます。

「育休退園」上の子も追い出される…なぜ?家で終日2人育児「つらい」 理由は保育士不足

地方都市ではどうでしょうか。岐阜新聞が読者の声を受けて取材をする「あなた発!トクダネ取材班」で、同じ時期に県内42市町村に調査を行ったところ、16市町村が育休退園を運用していることが分かりました。

自治体によると、保育士を確保できないことなどが背景にあるようです。一方でやはり保護者からは、2人を同時に家庭で育てることの大変さを訴える声が上がっていました。

「育休退園」子育て家庭ほんろう 専門家「政策、子どもの視点で」

育休退園を避けるために、産後2カ月で復職したり、妊活を遅らせたりする女性もいると伝えているのが、毎日新聞の報道です。

専門家は、育休退園で一時的に保育園の枠が空いたとしても、親が復職したら今度は2人が入園を希望することになって意味がなく、少子化に逆行する制度だと指摘しています。

「育休退園」という制度が「生み控え」につながってしまうようならば、あってはならないことです。本当に制度がより多くの子育て世代に役立つ効果があるのか、しっかり検証する必要があると考えます。(熊)

(東京すくすく 2023/10/31)
(東洋経済オンライン 2023/1/19)
(岐阜新聞 2023/1/7)
(毎日新聞 2023/10/6)

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