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「どうなってもいい」と新人女性記者に襲いかかる刑事課長を許してきた『男社会の異常な環境』はどこまで変わったか

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モヤモヤしながら生きてきた【第1回】立派な「男」になろうとしていた私

署長が下に住む官舎に夜回りにきた新人女性記者を部屋に招き入れ、「どうなってもいい!」と叫びながら襲いかかった刑事課長。公務中に酒盛りに興じ、女性記者の手をつかみ「レイプしよう、レイプ」と迫る市役所課長。そして、これらを見て見ぬふりをする上司。

取材の現場で男性社会の不条理な暴力にさらされてきた現役女性記者、出田阿生さんが、自身の経験をもとに書く連載は生々しく、メディアとその周辺の歪んだ構造を伝えてきます。

男性記者なら出会わないような壮絶なセクハラに数多くさらされてきたことを思い出しながら、出田さんは自分自身についてこう振り返ります。

なんでこんなに「嫌だ」と相手に言えなかったんだろう。そう思うと、当時は自分が「一日も早く、立派な男にならなきゃ」と考えていたことに思い当たる。

出田さんが「男にならなきゃ」と思わせられたのは、「女性」が仕事場にいてはいけないと迫る強烈なメッセージを、職場環境が発信していたからです。自尊心を傷つけられながら、懸命に「男のふりをする」ように、追い込められていたのです。

財務省事務次官の女性記者へのセクハラ問題をきっかけに、女性記者たちがが被害に声をあげたり、社会がその理不尽さに怒るようになったり、この5年で大きく改善した部分もあるといいます。

一方で、いまだに、「警察官に情報をやるから胸を触らせろと言われたら、言うことを聞いた方がいいでしょうか……」と女性記者が相談せざるをえなくなるような環境も残っています。

男社会の「異常な常識」を捨て去り、社会が本当に誰もが生きやすい社会にできる
か。まずはメディアをめぐる環境を変えることが問われています。(瀬)

(コレカラ 2013/12/12)

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