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中国が次々と経済データを非公表に。だからこそ、OSINTの手法でその失速の実態を暴き出す

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。

きょうのおすすめはこちら。

調査報道・新世紀 File1 中国“経済失速”の真実

急成長する中国経済。しかしいま不動産分野を中心に陰りが。ところが実態を知ろうにも、中国は公表してきた経済関係のデータを次々と非公表にしています。実態はどんどん不可視に。

その状況に、公式発表が少なくても、何とかOSINT(オープンソース・インテリジェンス)の手法で迫れないかと挑んだのが、「調査報道・新世紀」と銘打ったNHKスペシャルの新シリーズの第一弾です。

詳しくはNHKプラスで11/12(日) 午後9:49 まで見られるので、そちらでじっくりと見ていただくとして、どんな手法を駆使したのかを紹介します。

・SNSに投稿される、賃金未払いに抗議するデモなどの動画を消される前に収集し、その発生場所や頻度を可視化

・地方政府の予算・決算書から債務残高を抽出したうえで、そこには記載されていない「地方融資平台」の投資で生じた莫大な「隠れ債務」を割り出しています。積み上げた数字を対GDP比で見てみると……

・債務比率の高い地方都市の実態を割り出して、現地調査。巨大な高架の6車線道路に行ってみると……唐辛子!?(ここは面白ポイントなのでぜひ番組で。よく撮れましたね)

・シカゴ大学教授による夜間照明でGDPを推計する新たな手法。これで割り出した値を中国政府の発表と比べると……

もちろん、OSINTのような「空中戦」だけでなく、地方政府の現役職員への覆面インタビューや、立ち退きさせられたのに代わりの家の提供を反故にされた住民の声も拾うなど、地に足の着いた取材もしています。

こうした内容を組み合わせて、これまで中国の高い経済成長率を支えてきた投資モデルが限界を迎えているのではないかと提示し、一党支配によるGDP至上主義を掲げてきた弊害が表面化し始めていることを伝えているんですね。

このシリーズ、今後も続くようですので、期待してみています。(熊)

(NHKスペシャル 2023/11/5)