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ニューヨーク・タイムズの報道を検証…新創刊雑誌『地平』が紹介する米国独立系メディアの「調査報道」

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。

きょうのおすすめはこちら。

ガザ報道をめぐる用語統制——流出したニューヨークタイムズ内部メモ

雑誌、特に総合誌が厳しい時代に創刊し、注目されている月刊誌『地平』。さまざまな論考やノンフィクションが掲載されています。その中のひとつ、アメリカの独立系メディア『ザ・インターセプト』によるニューヨーク・タイムズについての調査報道が「今日の必読」です。

この記事はニューヨーク・タイムズがイスラエル・パレスチナ問題の報道について、イスラエル寄りの「用語統制」を指示した社内メモをスクープしたものです。

記者に対し、「ジェノサイド」や「民族浄化」といった用語の使用を制限。パレスチナについては「占領地」という言葉や、ガザ地区についても「難民キャンプ」という言葉を避けるように求めたのです。

このメモは「客観的なジャーナリズムの原則を維持するためのガイドライン」となっていますが、実際に記者の一部からは、NYTの報道がイスラエル偏重になっている証拠だと指摘があがっています。

こうした用語については、やはりインターセプトが2023年10月から11月のNYT、ワシントン・ポスト、ロサンゼルス・タイムズについて調査した結果があります。

これによれば「虐殺」「大虐殺」「恐ろしい」という表現は、パレスチナ人によってイスラエル人が殺害されたケースにのみ使われていて、その逆はないこと。イスラエル人の死は「虐殺」と報じたケースが53回あるのに、パレスチナ人については1回だけでした。

日本のメディア報道もこうした影響にないのか、検証が必要です。

地平では創刊号から「巨大法律事務所の膨張」や「向精神薬 認知症と発達障害の闇」といった気になるノンフィクション連載も始まっていて、月刊誌冬の時代に頑張ってほしい存在です(瀬)