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警察とは持ちつ持たれつのハズが…薬物密売グループに潜む「取締官のS」が明かした『末路』

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マトリのS(スパイ)となった大物密売人の末路とは 実名インタビュー「命がけで協力したのに裏切られた」

暴力団や麻薬密売組織に潜む警察の内通者、「S」(スパイ)。ドラマや映画ではおなじみですが、実際にはどんな存在なのか。

共同通信の武田惇志記者が、密売グループの捜査に協力した末に、薬物所持で警察に逮捕された大物密売人の男性に行ったインタビューは、その実像をリアルに伝えてきます。

Sになった場面を男性はこう話します。

密売人逮捕に協力した渡辺元受刑者は、X取締官から「Sになってくれないか」と持ちかけられた。
 「『じゃあ俺に何をくれるの?俺はただ働きなのか?』って話になったわけですよ。そうすると、『仕入れたもの(違法薬物)に関しては売っていいから』と言われた。それで、『お、面白い話だな。これはまんざらうそじゃないな』って思ったんですよ」

「もちつもたれつ」の関係は、しかし。ときに緊迫する場面も迎えます。組織からSではないか、という疑いが持ち上がるのです。 

 「おまえと関係があった密売人が次々に逮捕されているらしいな。これ、どういう風に説明できる?おまえ、Sなんじゃないか?これが事実だとしたら、おまえ……」。渡辺元受刑者は、ホテルの中層階の一室で、密売人グループのリーダーからそう詰め寄られた。グループの中に、ナイフを持っている人間の姿も見えた。

こうした危機を切り抜けながら、Sを続けながら、同時に麻薬売買にかかわっていた男性は、結局、逮捕されます。そのとき、警察はどう対応したのか。こちらはぜひインタビューをお読みください。

Sという存在について、記事の最後で、薬物事件に詳しい一般社団法人「刑事司法未来」の石塚伸一代表理事はこう解説します。

 「一度Sにされてしまうと、捜査員に薬物売買や薬物使用の秘密を握られた状態となります。なので、自分の意思で売買をやめにくくなったり、依存症者であれば回復支援の団体につながりにくくなったりしてしまう。倫理的に問題がある捜査手法ではないかと思います」

とかげの尻尾切りになるSの哀れさが、このインタビューかた伝わってきます(瀬)