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泉鏡花、徳川慶喜…歴史上の有名人たちの「墓じまい」という問題

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泉鏡花のお墓が霊園から消えた… 歴史的著名人の「墓じまい」相次ぐ

お墓を管理する遺族がいなくなったり、あるいは事情によってお墓をなくしたり、移転したりする「墓じまい」。少子化や高齢化によって、お盆を前にその話題が気になる人も多いのではないでしょうか。歴史上の有名人も例外ではありません。

「高野聖」をはじめ近代日本の幻想文学の先駆者で、川端康成や三島由紀夫にも影響を与えた作家、泉鏡花のお墓が、東京都豊島区の都立雑司ケ谷霊園から消えたことを、毎日新聞が報じています。

幸いにも、これまで管理をしていた男性が、自らが74歳という高齢のために今後を心配し、別のお寺に永代供養をするように手配をして、移転をしたそうです。その経緯を、毎日新聞はこう報じてします。

男性は鏡花と血縁関係にはないが、「鏡花の名誉を守るためにも責任を感じて10年以上管理してきた。私自身が元気なうちはいいが、死んだ後も代々継承していくのは難しいと思った」と明かす。

泉鏡花のお墓は幸いにして存続しましたが、歴史上の有名人、名家のお墓の中には、膨大な維持費がかかることから、遺族がやむなく墓仕舞いを考えているところも少なくありません。徳川慶喜のお墓もそのひとつです。

教科書に出てくるような偉人のお墓には歴史的、文化的価値があります。しかし、それを維持するコストを個人に担えというのはとても不可能な話です。いかに存続していくのか、あるいはいかないのか、「墓じまい」は社会的問題でもあります(瀬)

タイトル画像は左が泉鏡花、右が徳川慶喜(いずれも国立国会図書館デジタルコレクション)