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日本全国どれだけ暑くなったのか、一目でわかるコンテンツが次々誕生…今年はメディア界の「ヒートマップ元年」か

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。

きょうのおすすめはこちら。

東京の夏は着実に「暑く・長く」なっている

2018年に作られたコンテンツが、ことし再び話題になっています。それが、こちらの「東京が確実に暑くなっている」ことを可視化したヒートマップです。

作成したのは、現在はGoogleでフェローを務める荻原和樹さん。東洋経済オンラインにいた2018年7月に公開しました。

今夏、あまりにも暑かったせいなのか、荻原さん、なんとそれを最新版に更新してくれました。イイネがつきまくっています。

いやあ、ヒートマップ、本当に一目でわかりますよね。説得力があります。荻原さん、メディア関係者向けにヒートマップの作り方講座も開いていました。

荻原さんのコンテンツに触発されたのか、ことし、次々と全国のメディアからヒートマップの発信が相次いでいます。

以下、発信された順にご紹介します。

猛烈な暑さ「10年に1度程度」…熱中症搬送、7月の2週間で昨年同期の2倍以上

この夏、まず動いたのは読売新聞。荻原さんが東京なら、大阪本社もある新聞社だとばかりに、大阪市の夏の平均気温を可視化したヒートマップを発信しました。

ソースは同じ気象庁のデータ。荻原さんと違って、年を追うごとに横に広くなっていくマップで、140年分の変化を表現しています。

大阪の暑さと言えば、高村薫さんの小説『黄金を抱いて翔べ』ですね。大阪に住んだことがないのですが、都市部特有の暑さをこれでもかと表現していて、読んでいるだけで暑さでバテそうになりました。小説が出版されたのが1990年。このヒートマップを見ると、そのころよりさらに暑くなっているのが分かり、慄然とします。

140年で一番暑い夏 秋田市の8月平均気温30度、観測史上最高

東北も暑くなっているぞ、とばかりに発信したのは、秋田魁新報のデータジャーナリスト、斉藤賢太郎さんです。斉藤さんはTwitterでも、荻原さんの影響を受け、学んだことを公表しています。

ちなみに「ヒートマップ」って、暑さのマップだけではないんですよ。(すいません、以前はそう思っていました)数値を色彩の変化や濃淡で表したグラフのことです。

秋田はことし、記録的な大雨の被害を受けましたよね。そこで斉藤さん、降水量などを可視化するヒートマップも作っていました。

暑くなった福岡、一目瞭然 134年で4度上昇…8月の気温を可視化【14地点ヒートマップ】

いやいや福岡も暑くなってるばいと、西日本新聞の金澤皓介さんや福間慎一さんたちが県内14地点のヒートマップを作るという手の込んだ配信をしました。

先々週、西日本新聞社を訪ねて福岡に行ってきたきたばかりなのですが、10月というのにTシャツ一枚でないと過ごしていられない暑さでしたね。九州は毎年のように豪雨災害にも見舞われていることもあり、この先も心配です。

126年で日本が最も熱かった夏 松山市でも記録的な1日が

四国でも暑さは尋常ではなかったと、愛媛新聞が8月末までのヒートマップを配信しています。「記録的な1日」というのは、観測史上初めて最低気温が30度以上になった8月10日のことのようです。

福井の夏、100年で1.9度上昇 7~9月の気温 80年代以降、暑さ顕著 本紙、127年分を可視化

北陸の福井新聞もヒートマップを配信していました。上昇した温度は他のところほどではないとはいえ、こちらも明確に暑くなっているのが分かります。

100年前の夏はこんなに涼しかった…東京の気温を「見える化」したら 2023年の異例ぶりくっきり

荻原さんは東京の気温を発信したわけですが、地元紙の東京新聞はどうしたか。ならばというわけではないでしょうが、ちょっと変わった演出のビジュアルを出していました。

1901年から1920年、2001年から2020年、そして2023年の三つの期間を並べて、気温の平均値を可視化。おお、これもすごく説得力があり、理解しやすい表現ですね。どうやら、2018年にエドワード・ホーキンスという気候学者が公開した「温暖化ストライプ」と呼ばれるものに由来するのではないかと。 時期ごとに切り替えられるマップも作っています。

荻原さんと同じようなスタイルのヒートマップも作っていて、千葉・銚子の気温の変化の可視化もしていました。

「100年前は26度未満ばかり」って、もうそんな時代は来ないのですかね。

実はその前にもヒートマップのコンテンツ、出ていました

ことしが元年か、とタイトルでは表現しましたが、実はその前にもいくつか出ています。

まずは信濃毎日新聞。長野市のヒートマップを発信しています。色合いも作りも、荻原さんインスパイアっぽいですね。

朝日新聞は、「4月でもう暑い!」に着目して、春の東京の最高気温でのヒートマップを発信。これまた、いいところに目を付けましたね。

神戸新聞などが関わる関西発のニュースサイト、まいどなニュースでは、「猛暑日」「熱帯夜」「最高気温33度以上」の日数を、独特の表現でヒートマップ化。過去70年分は他のコンテンツよりは短いですが、各都道府県のものを作ってしまうという力業でした。

なんだかここまで見ると、もう暑さは絶望的な気さえしてきます。J・G・バラードが『燃える世界』で描いたディストピアは、ありえない空想のはずだったのに、このままだと本当に到来してしまいそうで不安になってきますね。傑作なので未読の方はぜひ。誰か今こそ映画化してください。

一つの優れた表現をきっかけに、「わかりやすいコンテンツ」がどんどん生まれ、輪が広がっていく。メディアにとっても読者にとっても、とてもいい進化が起きています。

でも、暑さの進行だけは、もう勘弁してください。(熊)

追記:(取材考記)気象庁公開 データ形式、暑さ可視化に一役

10月26日に、朝日新聞の小宮山亮磨記者がヒートマップでの暑さの可視化についての記事を発信していました。こうしたことができるのも、気象庁がオープンデータ化してくれたおかげと。こういう取り組み、大事ですよね。

さらに追記:大阪の今夏は暑く長く、秋の気配は10月に 100年の平均気温をヒートマップで可視化

そして11月になってヒートマップを配信したのが産経新聞です。この時期になってもまだ新たなヒートマップってどういうこと?と思って見てみたら、なるほど、比較する対象期間を延ばすことで、「秋の気配」がいつ訪れるかも可視化したわけですね。

こうした新たな視点、気づきにもつながるので、ビジュアル化することはやはり意義があるなあと。

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