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初の実名となった「少年」の死刑を山梨日日はどう報じたのか、それを取材した神戸新聞の異例の記事

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。

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判決の日 残された「痛み」どう書く 被告自ら死刑希望、地元紙の葛藤

19歳の少年が交際を断られた女性の両親を殺害し、住宅にも放火して全焼させた事件。2021年に山梨県甲府市で起きたこの事件は、検察が「少年」の実名を公表した初めての事件となりました。

現在は21歳になった遠藤裕喜被告に対する判決公判で、甲府地裁は「犯行当時19歳であったことを考慮しても、死刑を回避すべき決定的事情とはいえない」として死刑を言い渡しました。

その裁判を取材した地元紙、山梨日日新聞の記者たちを、改正少年法をテーマにした連載「成人未満」を展開している神戸新聞が取材しています。

メディアが特定の事件を取材するメディアを取材するのは異例の取り組みです。

記事は法廷で被告の表情やしぐさに注視する記者や、裁判員を取材する記者、取材班のリーダーなどが次々登場する群像劇になっていて、まるで『半落ち』などの横山秀夫さんの小説を読むように、非常に興味深く読めます。

とはいえ、これはフィクションではなく事実を対象にしたもの。メディアの中にいた者の実感を忌憚なく言わせていただければ、メディアは自分では取材をするのに、いざ取材対象にされると、極端に内部をさらけ出すのを嫌がるところがあります。

その意味で、この取材がよく実現したものだと驚きました。山梨日日新聞の幹部に相当の理解があったと仄聞しております。

非常に興味深く読ませていただきましたが、まだまだ深掘りしてほしいですね。傍聴記を書いた記者が、この事件がもたらしたものを「痛み」と表現したのはなぜなのか。報道にあたってどういう議論があり、記者の葛藤があったのか。

こうしたメディアどうしのコラボは間違いなく新たな効果を生むと思います。この先も期待しています。(熊)

(神戸新聞 2024/2/22)

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