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災害前線報道ハンドブック【第3章】検証フェイズ⑤危険な場所での住宅再建をどう調べる?

スローニュース 熊田安伸

前回はハザードマップなどのオープンデータで、「避難弱者」のはずの高齢者や子どものための施設が危険に晒されている実態などを伝える手段を紹介しましたが、今回はこうした津波の浸水想定区域に住宅が再建されてしまったケースなどを検証する方法について解説します。


基本ツールは「建築計画概要書」

津波の浸水などが予想される危険な場所に住宅が再建されてしまっていないか。それを調べることができるツールが「建築計画概要書」です。

建物を建てるとき、建築主は「建築確認申請」をして、建築基準法にのっとったものであるかどうか審査を受ける必要があります。その申請のために提出される書類です。

概要書には、建築主である会社や個人の情報や、建築士、設計者、施工会社の情報、さらに建物の敷地面積や床面積、構造、高さ、設備などの情報が記載されています。大阪府の門真市が架空の建築物の実例を掲載していたので、参考に引用します。

門真市のホームページより

提出された書類は、違反建築の防止や、隣などとの紛争防止を目的に建築基準法で閲覧ができるオープンデータです。写しが欲しい場合は、有料で入手することもできます。

閲覧ができるのは提出先の特定行政庁です。

  • 市の場合は市役所

  • 小さな町村の場合は都道府県の土木事務所

ただ、東京都については、延床面積が1万平方メートル以下の建物の場合は市や区で、それを超える大型の建物は都庁の都市整備局市街地建築部建築指導課での閲覧になります。

これを利用して、東日本大震災のあと、NHK盛岡放送局が浸水地域に住宅や店舗を「新築」する建築確認申請が相次いでいるとする“無秩序な復興”が始まってしまったと報じています。

さらに、2018年の西日本豪雨の2年ほど後、広い範囲で「危険な住宅再建」が相次いでいたことを明らかにした報道が次に紹介するものです。

ここから先は会員限定です。建築計画概要書を使った応用編の取材。さらにそのツールの限界を乗り越えるため、新たに編み出された手法についてご紹介します。

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