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「中国船がいまも日本沖でサンマ漁」「尖閣侵入船は当番制か」いま船のデータから発見する報道が熱い

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。

実はこのところ、船にまつわる様々なオープンデータを分析することで「発見」をした報道が各社から相次いでいるのです。興味深いのでまとめてみました。

日本沖で操業、持ち帰れば「中国産」 全面禁輸1カ月、中国の魚事情

朝日新聞は、日本産の水産物を全面禁輸しているはずの中国の漁船が、相変わらず日本の沖合でサンマ漁などを続けていて、中国で水揚げすることで「中国産」として流通させている実態を独自の調査で明らかにしました。

この調査に使われたのが、漁船に搭載されたAIS(船舶自動識別装置)の信号から位置や操業状況を調べられる「グローバル・フィッシング・ウォッチ」です。これまでも世界のメディアが報道に利用してきた、すでにスタンダードとも言えるツールの一つ。ただ、日本ではこれを利用した報道はまだそれほど多くはありません。

尖閣侵入に「規則性」見えた…「特定の時間」「日本船いると追跡」中国海警船の動き分析

読売新聞は、尖閣諸島沖を航行する中国海警船には、一定の行動パターンがあることをデータ分析で明らかにしました。「定期パトロール」のように特定の時間帯に領海侵入し、日本の船がいると追いかけるように入っているといいます。

取材した大重記者から直接話を聞く機会がありました。使ったデータは第11管区海上保安本部のもので、これまでメディアはそのまま掲載することはあっても、データを用いて動向を総合的に分析することはなかったといいます。今回、防衛大学校の中澤信一准教授の協力で初めて分析してみたとのこと。Flourlishを使ったビジュアル化がなんとも手作り感があって素敵です。掲載した分析結果の他にも、正確性を検証できないため今回は記事化を断念したものもあったようで、まだまだ新たな事象が見えてくる可能性はありそうです。

北朝鮮制裁逃れ疑惑の船、日本入港3年で38回 監視に穴

日本経済新聞は、昨年あたりから船舶の位置データや、物流の記録を使った報道を次々と発信しています。こちらもその一つ、国連の北朝鮮制裁に違反した疑いのある船6隻が、過去3年で38回も日本に寄港していたことを明らかにしています。

調査に使われたのは、英リフィニティブから得たAISによる航跡や入港記録だとのこと。こちらの場合は、有料データということですね。こうした本来ならビジネス目的で提供される海外のデータを次々と見つけてきては利用する報道、いかにも日経的です。

『黒い海』関連のオープンデータも

データから発見、ではないのですが、船といえば4冠受賞で話題の調査報道ノンフィクション『黒い海 船は突然、深海へ消えた』ですね。

実は「船舶事故ハザードマップ」というオープンデータサイトで、第五十八寿和丸が沈没した位置を知ることや、本書で問題にしている事故調査報告書などを入手することができるのです。

船舶事故ハザードマップより

各メディアともこうしたオープンデータを利用した調査報道、まだまだ深掘りができそうで、目が離せません。(熊)

(朝日新聞 2023/9/25)
(読売新聞 2023/4/5)
(日本経済新聞 2023/4/8)
(講談社 2022/12/23)

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