現代人は時間の奴隷? ナマコが問いかける、“幸せとはなにか”
生物学者が考える永遠に生きる方法とは?

はじめに

 本書はナマコから始まります。一般の方がナマコと接点があるとすれば食べることでしょう。私はナマコを40年近く研究してきました。しかしそれは食料にならないナマコです。だからここでは食の話はいたしません。純粋学問としてのナマコ学を述べさせていただきます──と、こう書くと、これ以上読んでいただけないのは確実です。申し上げておきますが、本書は、高齢化をはじめとして現代が直面している大きな社会問題につき、生物学の視点から切り込もうとするものです。社会と接点のない浮世離れした本ではありません。

 社会問題に切り込む視点を与えてくれたのがナマコでした。ナマコという、われわれとはまったく異なる動物とつきあっているうちに、彼らの目から見たら現代人はどのようなものに見えるのだろうかという疑問が湧いてきたのです。

 どう見えるかという結論を先に書けば、「人類は地上に楽園をつくるべく努力してきた、そしてナマコもまた地上の楽園をつくりあげた、ただし楽園のつくり方は正反対である」ということです。現代人は資源とエネルギーをふんだんに使うことにより便利で長寿を享受できる楽園をつくろうとしてきましたが、東日本大震災や異常気象の頻発など、このやり方は考え直されるべき時にきているのではないでしょうか。ナマコはわれわれとは逆で、省エネに徹することにより天国をつくっています。

 ナマコの目を通して現代社会を批判的に見ることを本書では行っていきます。

 その準備として、まずナマコとはどのような動物かを述べ、ナマコの目を読者諸賢に持っていただくことにします。ではページをめくってください。ナマコの天国へご案内いたしましょう。

第一章 社会問題をナマコから考える──地上に楽園を作り上げた生物(1)

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