受刑者たちは、どんな本を読んでいるのか?
刑務所の中に、図書館がある。噂を聞きつけて訪れたのは東京都府中市の府中刑務所。罪を犯し、社会から閉ざされた環境に身を置く彼らは、なぜそこで本を手に取るのだろうか。受刑者たちの生活を見つめ続ける現役刑務官に塀の中の読書風景を訊いてみた。「小説新潮」掲載、驚きのルポ。

どうして受刑者は【本】に触れるの?

 間近で受刑者たちを見る彼らに改めて、なぜ刑務所の中で本が読まれるのかを尋ねてみた。少し考えてから上地調査官が口を開く。

「受刑者たちは常に最新の情報に飢えています。それは焦りや恐怖心にも近い感覚でしょう。数年という時間を無為に過ごしてしまうのが彼らは怖い。

 また、出所した時の社会が全く知らないものになってしまっていたら、そこに順応することが出来なかったら、という不安も大きい。例えば、長年刑務所に入っている人間は、電車のICカード乗車券を知らないこともあります。いま世間を賑わせているコロナについても彼らはどんな病気なのかわからないんです。

 そういった漠然とした恐…

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