もし、世界三大疑問というものがあるのなら、「宇宙の始まり」に関する疑問がその一つに入ることは確実でしょう。この世の中に疑問は無数にありますが、それらの答えを追究すれば、時間をさかのぼって理由を探すことになります。どんどん時間をさかのぼっていけ…
宇宙は今から約138億年前、「ビッグバン宇宙」という状態から始まった。この本を手に取った読者の多くは、「ビッグバン」について言葉だけでも聞いたことがあるだろう。ビッグバンとは宇宙初期の大爆発のことだ。それは、私たちがいま住んでいる宇宙とはまっ…
宇宙の成り立ちに関する理論として有望なものに、宇宙のインフレーション理論というものがある。インフレーションと言えば、経済用語としてよく知られているので、まず物価が急上昇することを思い浮かべる人も多いだろう。比較的最近では、ジンバブエ共和国で2…
宇宙が「無」から始まったと考えられている、ということを読者はどこかで聞いたことがあるだろうか。宇宙の誕生について書かれた本の中では、この話が必ずと言ってよいほど紹介される。これはあくまで一つの仮説に過ぎず、確立した学説というわけでもないのだが…
一般に境界条件が何かを考えるには、まずはそれを当てはめるべき物理法則がわかっていなければならない。宇宙の境界条件を考えるのであれば、宇宙の誕生後の様子を支配する物理法則が完全にわかっていなければならないが、それは難題だ。なぜなら、宇宙の振る舞…
無からの宇宙創世論において、重要なカギになる物理の理論は、量子論だ。量子論によって示される世界はとんでもなく直観に反した世界で、常識的な人間の理解をはるかに超えている。量子論のエキスパートとも言えるリチャード・ファインマンという有名な物理学者…
量子論が発見されて、古典物理学がいつも正しい答えを与えるとは限らないことが明らかになった。人間が日常的に経験する現象では、依然として古典物理学が有用であるから、古典物理学が間違っているというのは言い過ぎだ。だが、人間から見るとはるかに微小な世…
理論物理学研究所が設置された当時、量子重力の研究は理論物理学の中で主流の研究分野ではなかった。一方で、実験結果と比較しつつ進められていた原子核理論や素粒子論は、理論物理学の研究の花形だった。湯川秀樹が素粒子の相互作用に関する新理論を発表したの…
宇宙とは、時間や空間に包み込まれた存在である。それでは、時間や空間とはいったい何なのだろうか。日常生活を送るうえでは、それらが存在するのはあたりまえであって、その正体について考えることなど普通はないだろう。そのようなことをいつも考えていると、…
あらゆる運動が相対的なものならば、真空の空間中を伝わる光の速さというのは、何に対する速さなのか、という疑問が直ちに生じる。真空の空間には何も基準になる物体がないからだ。真空中の光の速さが1秒に約30万キロメートルというのは、動かしようのない観…
最初に考えられた、重力を含まない相対性理論は「特殊相対性理論」と呼ばれる。それに対して、重力を含む理論として拡張されたものは「一般相対性理論」と呼ばれる。この2つの相対性理論を、アインシュタインはほぼ独力で作り上げた。一般相対性理論によれば、…
宇宙が膨張しているという世紀の発見をしたのは誰だろうか。これについては長い間、エドウィン・ハッブルが最初の発見者だ、というのが常識となっていた。ところが数年前、実際にはそれほど単純な話ではないことが研究者の間でよく知られるようになった。この話…
宇宙には様々な種類の物質がある。私たちの身のまわりにある物質は、原子の集まりだということがよく知られている。その原子が何でできているかと言えば、原子核と電子で構成されている。電子はそれ以上分解できない素粒子だと考えられている一方、原子核は陽子…
ガモフたちのビッグバン理論に基づけば、宇宙初期にある元素はほとんどが水素とヘリウムだけになる。現在の宇宙には水素とヘリウムの他にも、いろいろな元素が豊富にある。地球上には天然に存在する元素が92種類もある。これらの元素のいくつかは、私たちが生…
宇宙にとって生命や人間の誕生が必然的なものなのかという問題意識は、1973年、ブランドン・カーターという科学者によってはっきりと述べられた。常識的な観点からは、宇宙が時間進化した結果、人間が宇宙に誕生したと考えられる。カーターはこの常識を覆し…
最近、多宇宙という学説が脚光を浴びている背景には、素粒子論におけるストリング理論の研究がある。この理論の究極の目的は、いくつかに分かれている物理学の基本的な法則群を統一して、単一の理論からすべての法則を導きだそうというところにある。このように…
宇宙の始まりは、この世における存在のすべての起源を包み込む。世の中にあるすべての疑問が詰まったところ、それが宇宙の始まりだ。宇宙に起こる現象の原因は、すべてが過去の宇宙にあるのだから、ある意味では、究極の過去である宇宙の始まりにすべての原因が…
量子論の原理が果たして宇宙の外、すなわち、時間や空間を超越した領域にまで適用できるものなのかどうか、実は誰にもわからない。いまのところそれを確かめる手段がないからだ。もし、量子論が時空を超えた領域に当てはまらないとすれば、何か別の原理が時空の…
ここで、ジョン・アーチボルド・ホィーラーという学者が提案した「観測者参加型宇宙」という考え方を紹介しておきたい。ホィーラーは、1911年生まれの理論物理学者で、2008年まで存命だった。量子論や相対性理論の研究者としてとても有名で、ブラックホ…
ホーキングも、比較的最近、ホィーラーと同じような線に沿った考えを述べている。ホーキングは無境界・境界条件という宇宙の始まりの条件を提案した(第2章で詳述)。この条件は量子論に基づいているので、様々な量子状態の重ね合わさったものだ。2006年に…
ここまで読んできた読者は、宇宙の始まりの謎が、宇宙の存在の謎と切っても切れない関係にあると気づいただろう。この宇宙が、私たちが直観的に考える通りに素朴に存在している、という考えは現代物理学において大きく覆されてしまった。このため、宇宙の始まり…
私たち人間は、どこまで宇宙の真実に迫ったのだろうか。私たちが今持っている知識は、宇宙全体から見てどれほどのものなのだろう。もちろん、私たちの知識の範囲からはそのようなことを知ることはできない。そこで、たとえ話として、もし大洋に住むプランクトン…
宇宙の始まりについてあれこれと考えてきましたが、楽しんで頂けましたでしょうか。どんなに論を尽くしても、宇宙の始まりが謎だらけだということに違いはありません。しかし、まずはその謎についての理解を深めるだけでも大きく世界観が広がる、ということを知…
聖アウグスティヌス著、服部英次郎訳『告白』(上・下)岩波文庫ジョン・ファレル著、吉田三千世訳『ビッグバンの父の真実』日経BP社大栗博司著『大栗先生の超弦理論入門』(ブルーバックス)講談社レオナルド・サスキンド著、林田陽子訳『宇宙のランドスケー…
松原隆彦(まつばらたかひこ)1966年長野県生まれ。名古屋大学大学院理学研究科・准教授。京都大学理学部卒業。広島大学大学院理学研究科博士課程修了。博士(理学)。東京大学大学院理学系研究科・助手、ジョンズホプキンス大学物理天文学科・研究員、名古…
宇宙はどうして始まったのか2015年2月20日初版1刷発行2015年3月13日電子書籍版発行著 者―松原隆彦発行者―駒井 稔装 幀―アラン・チャン発行所―株式会社光文社東京都文京区音羽1-16-6(〒112-8011)http://www.k…

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