2010年に逮捕された2人の金融マン エリートとアウトサイダーが見た奈落
SFCG(旧商工ファンド)の大島健伸と日本振興銀行の木村剛。彼らはどのように一時の成功者となり、転落していったのか。2人の人生をたどりながら、他人を犠牲にした個人主義の蔓延に警鐘を鳴らす。

4 新銀行の乱気流

落合伸治という男

 「木村さん、安田善次郎を知っていますか?」

 木村剛の著書『金融維新』によると、初対面の落合伸治は最初の杯を干すや唐突にそう話しかけてきたのだという。同書において木村は、そんな落合の第一印象について、「デカイ顔の男」とも書き記している。

 落合が持ち出した安田善次郎は、安田銀行を創設するなど明治から大正にかけて活躍した実業家で、のちの芙蓉グループへと続く金融財閥を築き上げた人物である。木村と同じ富山の郷土人でもあった。人たらしで知られる落合だが、温めていた新銀行の構想を切り出そうという場面で、ゆかりの経済人の名前を挙げたのは、一流の演出だったにちがいない。

 二〇〇三年三月十七日、日本橋三越近くの…

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