その社長は、首を吊ろうと思ったこの「工場」で、新年を迎えられる喜びに感激して泣いていた
銀行にその名を恐れられる一方、人情派で知られる再建弁護士・村松謙一。NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」でも反響を呼んだ、生々しい実話で綴る「会社救済ドラマ12話」。

上空26000フィートの空の旅人

 1か月後、私は件の大手都銀の担当者に会いに、再び北海道に飛んだ。

 途中、雲海を見ていたら、娘との北海道への空の旅を思い出し、なんだかとても悲しくなって、涙があふれてきた。

 娘の中学入学のお祝いに、I社長のお誘いで、家族6人で夏の北海道旅行をしたことがあった。「お腹がすいた」と言って、「味の時計台」のラーメンを子どもたちがふうふうとおいしそうにほお張っていたのを、I社長はほほえましく見ていてくれた。

 小樽のオルゴール堂がとても印象深かったと思い出を語ってくれた娘との旅行は、いまはもうできない。家族6人がそろうことはもうない。そんな記憶の回想のとき、とても偶然ではあるが、あのオルゴールのメロディ…

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