その社長は、首を吊ろうと思ったこの「工場」で、新年を迎えられる喜びに感激して泣いていた
銀行にその名を恐れられる一方、人情派で知られる再建弁護士・村松謙一。NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」でも反響を呼んだ、生々しい実話で綴る「会社救済ドラマ12話」。

会社救済ファイル1 K社長が命に代えて守りたかったもの

──老舗ビジネスホテルを再生に導いた天国からのメッセージ

 この事件は、起こってはならないできごとだった。

 そして、本再生案件に関与した一人の弁護士として、起こってはならないできごとが起こってしまったという現実を、企業経営に苦しみ、金融機関への返済に悩んでいる企業経営者や、債権回収に身を置く方々への問題提起として書き留め、記録しておかねばならないと思った。

 ここに記された事実を目にした読者の方々の意見は百人百様だろう。そのことは百も承知のうえで、弁護士であると同時に人の親として、私はこの事実を書き残すものである。

K社長との出会い

 K社長は、九州の某県で、90室を擁する老舗のビジネスホテルA社を経営していた。

 彼との出会いは1995のこと。彼の地元の商工会議所主催の…

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