その社長は、首を吊ろうと思ったこの「工場」で、新年を迎えられる喜びに感激して泣いていた
銀行にその名を恐れられる一方、人情派で知られる再建弁護士・村松謙一。NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」でも反響を呼んだ、生々しい実話で綴る「会社救済ドラマ12話」。

商事留置権の主張

「先生。困ったことが起きました」

 A社の社長が弱り切った声で電話をかけてきた。

「どうしたのですか」

「当社の商品の運送を依頼している運送会社から、申立前に発生していて、いまだ支払っていない運送代金を至急支払ってほしい。支払ってもらえなければ、運送会社の保管倉庫にある当社の商品を押さえる、と言っています」

 債権者の一人である運送会社が、運送代金を被担保債権とする商事留置権の行使を主張してきたのである。

「申立前に発生していた運送代金は、いくらくらいあったのですか」

500万円くらいです」

「いま、運送会社の倉庫に保管されている商品はどれくらいありますか」

「上代価格(卸値)で700万円くらいです」

「とこ…

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