その社長は、首を吊ろうと思ったこの「工場」で、新年を迎えられる喜びに感激して泣いていた
銀行にその名を恐れられる一方、人情派で知られる再建弁護士・村松謙一。NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」でも反響を呼んだ、生々しい実話で綴る「会社救済ドラマ12話」。

決断を後押しした〝もう一つの願い〟

 K社長に決断させたもう一つの理由。これは私にしかわからないだろう。彼は、天国にいるもう一人の息子(長男)に会いたかったのだ。会いたくて、会いたくて、仕方ないときだったのだ。すべてが自分を追いつめ、逃げ場のない暗闇の中で、天国の息子のことを思い浮かべたのかもしれない。

 K社長は、『長男が天国でどうしているだろうか。小学校1年生の君は、さみしくはないだろうか、つらくはしていないだろうか。もう一度、長男に会いたい』という思いを、26年の間、ずっと胸に秘めていた。

 否、K社長にしてみれば、心の時間は止まっていたから、26年前ではなく、いつでも昨日のことのように、小学校1年生になったばかりの長男との最…

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