その社長は、首を吊ろうと思ったこの「工場」で、新年を迎えられる喜びに感激して泣いていた
銀行にその名を恐れられる一方、人情派で知られる再建弁護士・村松謙一。NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」でも反響を呼んだ、生々しい実話で綴る「会社救済ドラマ12話」。

会社救済ファイル2 「経済合理性」よりも大切なものは何か

──全国初の旅館再生ファンドで蘇った落合楼

 人は誰も、他人には理解不能であるものの、当の本人には十分にその意味が理解できている、そんなできごとが一つや二つはあるものである。肉体という姿は消失しても、家族の絆は誰にも断ち切れはしない。

 本項は、3年ぶりに天国にいる娘が帰ってきて、父親として心の言葉を交わせた私自身の魂の再生の記録である。舞台となったのはある旅館。その主の了解を得て、あえて旅館名を記し、いまは亡きその旧経営者の魂に報告するものとして記述するものである。

落合楼

 静岡県は伊豆半島の中央部に位置する、深い山あいの天城湯ヶ島の温泉郷。

 その温泉街に位置する『落合楼』は、田山花袋、島崎藤村、北原白秋、川端康成等、明治、大正、昭和初期の文人…

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