さて、前章ではバンクシーをアメリカのグラフィティやストリート・アート、そして、ヨーロッパのシチュアシオニストの運動と、それに続くイギリスのポップ・カルチャーの交錯点として見てきましたが、ここで再びイギリスに目を向けて、バンクシーが登場した時のアートシーンとその背景を考えてみましょう。
バンクシーが登場する直前の一九九〇年代は、イギリスという国が大きく変わる時代です。
このことは、ベルリンの壁の崩壊に端を発した冷戦構造の終焉とそれに伴うグローバル化の本格化が大きく寄与しています。イギリスは、…
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