伝統──それはむしろ対決すべき己の敵であり、また己自身でもある
縄文土器・尾形光琳・庭園を題材に、日本の美を探り出す。『今日の芸術』の新展開。

五 伝統論の新しい展開──無限の過去と局限された現在

 つねに主張しているとおり、私は「伝統」を、古い形骸をうち破ることによって、かえってその内容──人間の生命力と可能性を強烈にうちひらき、展開させる、その原動力と考えたい。この言葉を極めて革命的な意味でつかうのです。

 因襲と伝統とはちがう、伝統はわれわれの生活の中に、仕事の中に生きて来るものでなければならない。現在の生き甲斐から過去を有効的に捉え、価値として再評価する。そのときに、現在の問題として浮かび上ってくるのです。古いものは常に新しい時代に見かえされることによって、つまり、否定的肯定によって価値づけられる。そして伝統になる。従って伝統は過…

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