この日本芸術に稀有な、非情の美しさをささえるもの、光琳芸術の土台になっているものは、いったいなんだろう。──すべての偉大な芸術家のばあいとおなじように、うちに秘められたはげしい矛盾にほかならないのです。
光琳の画面は大胆に抽象化され、装飾化されています。その奔放で強靱な気配は、ちょっと見ると、まったく矛盾なく、楽観的に描かれたように見えるかもしれない。だが表現が明快だからといって内容も単純なのだと考えたら、もちろん大まちがいです。
明快さの裏には、技術的に、また精神的に、のっぴきならない矛盾をはらんでいる。はげしい対立を克服して、一だんと冴えた緊張があり、不動に見…
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