伝統──それはむしろ対決すべき己の敵であり、また己自身でもある
縄文土器・尾形光琳・庭園を題材に、日本の美を探り出す。『今日の芸術』の新展開。

芸術家の反時代的精神

 作品に即して、技術的にこの二つの極をえぐりだしてみましょう。それらがもっとも象徴的に、具体的にあらわれているのは、やはりあの燕子花と紅白梅流水の二図であると思います。

 紅白梅はまことにきびしい。

 烈々たる精魂の緊張が梅の木の枝の一本一本の尖端にまでとおり、張って、貴族的な、壮厳でするどい高調子、能楽のリズムが高だかと鳴りひびいているかのようです。

 ところが燕子花には豊かなひろがりと、こうさ豪華さが見られ、富裕市民のオプティミスムが主調となっています。

 もちろん、双方は対照的な極です。しかし注意しなければならないことは、じつはそれらがともに反対極の要素によってささえら…

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