芸術家の反時代的精神
作品に即して、技術的にこの二つの極をえぐりだしてみましょう。それらがもっとも象徴的に、具体的にあらわれているのは、やはりあの燕子花と紅白梅流水の二図であると思います。
紅白梅はまことにきびしい。
烈々たる精魂の緊張が梅の木の枝の一本一本の尖端にまでとおり、張って、貴族的な、壮厳でするどい高調子、能楽のリズムが高だかと鳴りひびいているかのようです。
ところが燕子花には豊かなひろがりと、巧緻さ豪華さが見られ、富裕市民のオプティミスムが主調となっています。
もちろん、双方は対照的な極です。しかし注意しなければならないことは、じつはそれらがともに反対極の要素によってささえら…