伝統──それはむしろ対決すべき己の敵であり、また己自身でもある
縄文土器・尾形光琳・庭園を題材に、日本の美を探り出す。『今日の芸術』の新展開。

講談社現代新書版 はじめに

 伝統とは何か。それを問うことは己の存在の根源を掘りおこし、つかみとる作業です。とかく人は伝統を過去のものとして懐しみ、味わうことで終わってしまいます。私はそれには大反対です。伝統──それはむしろ対決すべき己の敵であり、また己自身でもある。そういう激しい精神で捉えかえすべきだと考えます。

 過去といっても、過ぎ去り、すべて終ってしまったものではない。自分の責任において創造的に見かえすべきモメントなのです。自分の全存在で挑み、新しくひらくものです。過去は自分が創るのです。ちょっと異様な発言に聞こえるかもしれませんが。そのようにして瞬間々々に創られて行く過去だけが、生きて、…

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