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Vol.29 私たちが調査報道のイノベーションを目指す「調査報道+」を開始した理由

 SlowNewsでは今週から、その名も「調査報道+(プラス)」の発信に乗り出します。目指すのは、調査報道のイノベーション。不正を指摘するだけにとどまらず、深く掘り下げることによって社会課題の解決を目指し、議論を喚起するような報道です。

Photo/アフロ

調査報道のイノベーションとは

 調査報道の目的は、「権力の監視」であり、「埋もれた事実を明らかにすること」です。当局に依存せず、メディア自らの責任で独自に取材し、発信する調査報道は、メディアの存在意義そのものに直結します。

 ただ、時間や手間のかかる調査報道のターゲットになりにくかった題材や資料は多数あります。そして複雑な現代においては、簡単に結論を出し、善悪を判断していい問題ばかりではありません。咀嚼に時間がかかるテーマを丁寧に解き明かし、議論の土台を社会に提示することも、今のメディアの役割だと考えます。

 さらに調査の手法についても、知られざるオープンソースを最新の手法で「再発見」するなどリニューアルし、新たに獲得した手法については公開していきます。なぜこの調査報道を発信することにしたのか、その経緯や問題意識も明らかにしてこそ、メディアとしての「説明責任」を果たすことにもつながると思います。

 そんなふうに調査報道をイノベーションしていく、その意味を込めて「調査報道+」と名付けました。毎週火曜日に記事をお届けします。

最初の発信は身近なおカネの話から

 最初に着目したのは、みなさんにとって身近で大切なおカネの話。実は国は年に一回、予算が正しく使われているかを徹底的に調査した結果を公表しています。それが会計検査院による「決算検査」です。毎年、検査院長が総理大臣にびっくりするほど分厚い報告書を手渡しているのがニュースで紹介されているので、目にした方もいらっしゃるのではないでしょうか。

会計検査院のホームページより

 独立した機関である会計検査院は、実はすごく大きな権限を持っているのです。憲法第90条で国の収入や支出を検査することが規定されていて、その結果として「これは不当だ」などと指摘し、是正を求めるのが役割。官公庁だけでなく、自治体や日銀、国が資本金を出している法人、それに補助金などを与えているものに対しても検査する権限を持っています。

 最近の事例でいうと、新型コロナウイルスの対策で政府が調達した「布マスク」のうち、去年3月の時点で約8200万枚(約115億円相当)が倉庫に保管されていて、保管費用も6億円かかっていたという報道がありました。これも会計検査院の検査で判明した結果です。

 しかし膨大な検査資料を全て読み込めるような記者はなかなかいません。埋もれた情報も多数ありました。そこで私たちは検査資料と関連する官庁のオープンデータを読み込み、「そこに存在しているのに社会的には隠れた状態」になっている課題を明らかにしていきます。

例えばNHK2億円分、もったいないことをした話も

 例えば、「深く掘り下げ」なくても分かりやすい話があったので、その一端をここで紹介してしまいますが、NHKが全国の放送局で使っているコピー機、その発注を適切に行っていれば、2億円以上節減できるはずだったということも指摘されています。これも報道はされてはいません。ああ受信料2億円分、もったいない…。

NHKに対する指摘 検査報告の一部より

 これは発注の仕方なので直接の関係はないかも知れませんが、このことが報道されていれば、デジタル化が進んでいるとはいえ、いまだに会議で紙を配ることもあるNHKで「紙文化」からの脱却が一層進むかも知れません。私たちの受信料の節減につながります。

情報をお待ちしております

 これから私たちが取り扱う案件には、このようにすでに「公表」されているものも含まれます。しかし「公表されているオープンデータ」をこそ読み解き、私たちのためのニュースになるよう、時間をかけて咀嚼する必要があると考えています。「その日のニュース」や「速報」に縛られるのではなく、「スローニュース」らしいあなたに関わる調査報道に、「調査報道+」ではチャレンジしていきたいと考えています。

 今後取材していくフィールドは、会計検査院関連ばかりではありません。すでにいくつかのプロジェクトも走り始めています。情報をぜひお寄せください。あなたの秘密は確実に守ります。joho@slownews.com まで。お待ちしています。

 また、こんな調査報道がしたいというジャーナリストの方も、ぜひご連絡を。取材費を含めた支援もご用意しております。こちらも上記アドレスまで。お待ちしております。

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