ここで、私が職人社会について、ひとつだけ断言できることがあります。それは、客観的にほかの日本社会と比較してみると、職人社会はかなり「甘い」ということです。
それを象徴するのが、「営業」です。
職人とはまさに正反対のイメージのある言葉でしょう。たしかに、多くの職人は「自分の技術に専念したい、それ以外のことはしたくない」と主張します。自分の領域には強いこだわりがありますが、他のことは知らない。こういう人を日本社会では「職人気質」などと持ち上げる傾向にありますが、小西美術工藝社では違います。そのような職人には、私がこのように諭すからです。
「あなたの言っていることをしたい人が、世の中にはたくさんい…
この作品では本文テキストのコピー機能を制限しています