実はこの「入り口」というのは、文化を体感するには非常に重要です。私はゴールドマン・サックスに勤務しているときにお茶を始めたのですが、私がハマっている姿を見るや、お茶を始めた方がけっこういました。みな、伝統文化を「体感」したいという思いは胸に秘めながらも、なかなか「入り口」がわからなかったことで、二の足を踏んでいたのです。
この「入り口」というものが、文化財の本当の役割ではないかと私は考えています。国宝の茶室を見学に行って、がらんとした空間を見るのではなく、本来あるべき茶室の姿──茶道具があり、茶花が生けられ、掛け軸がかけられ、そこには茶をたてる人と、もてなされている客人がいる──を目の当たり…
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