宇宙エネルギーの3/4を占める「ダークエネルギー」とは?
最新の宇宙論と天文学から浮かび上がってきた「宇宙最大の謎」が、今、大きな注目を集めている。宇宙の真の姿に迫る。

1部 ダークエネルギーの謎と物理学

 第1部では、宇宙論の基礎的な予備知識と、ダークエネルギーの問題に関する理論的な側面を主に説明していきます。ダークエネルギーは、この10年あまりの宇宙論の目覚ましい進展に伴ってあぶり出されてきた新しい問題です。その研究の背景、そして解決へ向けてどのような可能性が考えられているのかを、この前半部で見ていきます。

 第1章では、現代宇宙論の基礎である膨張宇宙がいかに発見され、どのようなことがわかってきたのかを見ます。そして、ダークエネルギーとは何なのかについて述べます。第2章では、後の説明で必要になる宇宙の歴史について、時間の流れに沿って駆け足で見ていきます。第3章では、ダークエネルギーと真空エネルギーとの関係について述べ、ダークエネルギーがいかに不自然なものなのかを説明します。第4章では、ダークエネルギーを説明する理論的な可能性として、代表的なものを列挙していきます。

1章 膨張する宇宙

     ダークエネルギーは宇宙の膨張をつかさどっています。この章ではまず、宇宙の膨張がいかにして発見されてきたのかを詳しく述べていきます。そして、なぜダークエネルギーというものを考えなければならないのかを見ていきます。

11 ニュートンの法則と宇宙

ガリレオとニュートン

 宇宙を科学的に調べられるのは、なんといっても物理学の発展があってのことですが、近代物理学の誕生そのものに、実は宇宙が大きく関係しています。

 近代物理学は、ガリレオ・ガリレイ(図2)やアイザック・ニュートン(図3)などの人たちによって1617世紀ごろに作り上げられました。ガリレオは近代物理学の誕生になくてはならない「落体の法則」を発見した人として有名です。そう、みなさんよくご存知の「重い物と軽い物を同時に落とすと、落ちるスピードは同じになる」という、あの法則です。

 彼は当時発明されたばかりの天体望遠鏡を自分自身の手で製作し、さまざまな天体観測を行っています。この天体観測によって、それまで肉眼でしか見られなかった天体の世界が、さらに詳しく観察できるようになったのです。

 ガリレオの時代まで、地上の運動の法則と天体の運動とは関係ないものと考えられていました。ガリレオは天体運動を地上の運動と同じ原理で説明しようと試みましたが、あまりうまくいきませんでした。しかし、それらは実際に関係しているどころか、どちらも完全に同じ法則に従っていることを明らかにした人物がいます。それがニュートンです。

 ニュートンはガリレオの亡くなった年に生まれました。ニュートンはガリレオがいだしていた運動法則を体系化し、さらにそれを天体運動にも当てはめてみたのです。すなわち、地上の物理学の法則によって宇宙を調べはじめたのです。

 その結果、あらゆる物体はお互いに引っ張り合っている、という有名な「万有引力の法則」を発見します。それは、地上で物が落ちるという現象と、月が地球のまわりを回ることや地球が太陽のまわりを回る現象は、同じ一つの法則から導かれることを意味しました。この瞬間、地上と天上の世界は同一のものという、統一的世界観が確立します。

ハッブルの画期的発見

 ニュートンの法則を使うと、太陽のまわりを地球などの惑星が回り続けるという太陽系のメカニズムは説明できるのですが、この法則を宇宙全体に当てはめてみると、非常に不自然なことがありました。それは、天体が宇宙空間に一様に広がったままの状態で存在し続けることができない、というものです。

 もし、万有引力の法則が宇宙空間にも当てはまり、かつ天体が空間に静止した状態にあったとしましょう。すると、時間がつにつれて宇宙にある天体はお互いに引っ張り合い、最終的にはどこか一ヶ所に集まってしまうはずです。しかし、実際の宇宙では無数の天体は広がったままの状態で存在しています。もし万有引力によって天体が一ヶ所に集まってしまわないのであれば、それらはある共通の重心のまわりで回転するか、もしくは重心のまわりを複雑に動き回るようになります。ちなみに、私たちのまわりにある無数の星はそのような状態で存在しています。これが、銀河系と呼ばれるものです。私たちの太陽は銀河系の中心のまわりを回転していて、他にも数千億個もの星が同様に回転しています。

 このような銀河系は宇宙の中に無数にあります。これらの銀河系が宇宙空間に静止し続けることはできません。ニュートンの法則に従えば、最初は静止していたとしても時間が経てばお互いに近づき合い、やがては合体することになります。しかし、実際にはそのようなことは起こりません。

 この問題の背景には、「宇宙は永遠不変のものである」──すなわち、宇宙は無限の過去から無限の未来まで同じように存在し続けるものだという、それまでの長い間の「常識」が人々の間に横たわっていた点を見過ごすわけにはいきません。しかし、これは無理もない話です。宇宙を詳しく観察できるはずもない時代に、「宇宙が変化している」ということは想像もできないはずですから。

 さて、時代が下って20世紀に入ると、このニュートンの矛盾を解決するどころか、それまでの人々の常識を覆す画期的な「事件」が起こりました。それは、アメリカの天文学者、エドウィン・ハッブル(図4)による「銀河系同士はお互いに遠ざかっている」という発見です。彼は銀河系を多数観測し、ほとんどの銀河系は、だんだんと我々から遠ざかっていることを突き止めます。ここに至るまでの長い間、宇宙は過去から未来までずっと同じように存在し、銀河同士の距離は平均的に変化しないと思われていたため、これは衝撃的な発見でした。

第1章 膨張する宇宙(2)

この作品では本文テキストのコピー機能を制限しています

01