「演歌」をめぐる謎を解き明かす それは「日本の心」か?「艶歌」とは何か?
「目からウロコ」「衝撃的」「出色」と各界から絶賛の嵐! 2011年度サントリー学芸賞受賞(芸術・文学部門)。

第一〇章 藤圭子と「エンカ」の受肉

*「演歌の星」藤圭子

「新左翼論壇」における「艶歌」論の勃興と同時期に、その理念を理想的に体現する歌手が登場します。「演歌の星を背負った宿命の少女!!」というキャッチコピーで一九六九年にデビューした「一七歳」(実際は一八歳)の少女歌手・藤圭子です。

 デビューに際しては、その苦労にみちた不幸な生い立ちが積極的に宣伝の素材として用いられました。幼い頃から浪曲師の両親に連れられて日本全国を巡業していた、母は過労と栄養失調のために目を悪くしたが、手術費用の五〇万円が工面できず失明した、といった「お涙頂戴」の逸話が、ギターを抱えうつろな目をした薄幸の美少女のイメージとともにおびただしい数の芸能雑誌、女性週刊誌の紙面を飾りました(「…

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