一九八〇年代前半までは辛うじて市場的な意味での大ヒットを生み出すことができた「演歌」ジャンルは、一九九〇年代に入って(あるいは昭和から平成になってというべきでしょうか)、むしろ「衰退危惧種」として扱われているように見受けられます。
本書の記述においてしばしば言及した美空ひばり没後の神格化は、「演歌」を市場的な価値とは隔絶した「文化遺産」に登録しようとする潮流によって支えられ、またそれを支えているといえそうです。
しかし、本書で強調したように、「演歌」という言葉である種のレコード歌謡を指示し、それに「日本的」「伝統的」という意味合いを込めるようになったのは一九七〇年前後であり、また、明示的に「…
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