「演歌」をめぐる謎を解き明かす それは「日本の心」か?「艶歌」とは何か?
「目からウロコ」「衝撃的」「出色」と各界から絶賛の嵐! 2011年度サントリー学芸賞受賞(芸術・文学部門)。

第九章 五木寛之による「艶歌」の観念化

*「演歌」の発明者・五木寛之

 前掲の寺山・森・竹中の議論においては、「流行歌」や「歌謡曲」という呼称が用いられ、「演歌」「艶歌」の語は一切使われていません。

 彼らの議論の枠組みをほとんどそのまま受け継ぎながら、そこで日本のレコード歌謡の肯定的な特徴とみなされた(すなわち旧来の知識人が最も軽蔑した)側面を強調して「艶歌」という新たな呼称を与え、一種の概念規定を行ったのは、一九六六年にデビューし七〇年代にかけて若者を中心に圧倒的な人気を誇った小説家の五木寛之です。

 なお、現在われわれが「演歌」と表記しているジャンルの形成期には、五木をはじめ「艶歌」という表記を「演歌」と区別した上で積極的な意味を込める傾向が優勢でした。一方、…

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