午前3時をまわった頃だった。居間のほうで電話の音が鳴り響いた。高江洲歳満は跳ねるように飛び起きた。前日からの小さな胸騒ぎが、どこかで小さく渦巻いていた。
受話器を取らなくても、深夜の電話が事件の発生を知らせるのは分かっていた。それも、琉球検察の公安部長検事である自分のところにかかってくる事件であれば、微罪で済むような話ではない。
「来た、やはり来たか。やっぱり例の絡みかな……」
深い眠りに落ちてはいなかったのだろう。電話器までのわずかの距離で、高江洲は想像をめぐらせた。
電話を取ると、予感は当たった。
「部長、コザが大変なことになっているそうです。臨場願えませんでしょうか」
コザか……大変な…
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