シロとクロの間には何段階ものグレーがある
法律スレスレの世界で荒稼ぎするグレーゾーンの男たち——彼らの知られざる実態に、極道取材の第一人者が迫る!

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「裏」情報サイトの先駆者 【本堂マサヤ】

2回もパクられ、今は両親にも仕事のことは知られてます。

嫁の父親は公務員で、うちの親も堅物です。

親戚の中でぼくだけがどういうわけか、グレーになった。

基本収入だけで年商8000万!

 インターネットで「激裏情報」というホームページをご覧になったことがあるだろうか。検索を掛ければ簡単にたどり着ける。

 最初のページに盛り沢山なメニュー。その中に小さく「激裏情報について」とある。クリックすると、次のようなことが書かれている。

〈あなたの知的好奇心を満たしましょう。「知りたい」この飽くなき欲求を満たさんがために激裏情報は存在します。(略)

 1996年に私が激裏情報を始めた頃には、まだインターネットという言葉も一般の方には馴染みのない言葉でした。(略)

 ただ当時と変わらない事実がひとつあります。それは、これからも「未来は誰も予想ができない」ということです。(略)

 混沌とした時代に私たちはどうすれば良いのでしょうか?

 私は、激裏情報がそのひとつの答えだと考えています。(略)

 それは、つまり情報力です。

 冷戦後、核が既に抑止力としてしか利用できないことは自明の理です。

 つまり、必ずしも利用するのではなく持っていることに意味があるのです。

 情報も同じく、まず持っていること、知っていることに意味があるのです。

 それを利用するかしないかは、あなた次第で、その選択権を持つことこそが重要なのです。(略)

「情報」とは、すなわち「未来への選択肢」なのです。

 あなたの「知りたい」にお応えできるよう引き続き努力してまいります。何卒変わらぬご支援とご愛顧を賜りたく、よろしくお願い申し上げます。

激裏情報代表 激裏こと本堂マサヤ〉

 ちょっと改まった感じのご挨拶だが、情報の中味は玉石混淆、硬軟取り混ぜ、ごろごろ乱雑に並んでいる(以下は20141027日付の例)。

 まず「取扱情報」欄には、

●書籍を割引価格(1015%OFF)で購入する方法

ADHDを装ってリタリンと同成分の薬を手に入れる方法

100万円から1000万円の現金を手に入れる方法

●激安タブレットを転売して儲ける方法(期間限定情報)

●スマホアプリを使って時給7200円を稼ぐ方法(期間限定情報)

……といった項目が並ぶ。

「クリニック」欄には、

●認知症の親の運転を強制的にやめさせたい

●ドコモの連帯保証を利用して端末をゲットしたい

●今でも使える傷害保険の悪用方法を知りたい

●セフレ(セックスフレンド)を複数作りたい

アイドルや素人モデルの個人撮影をしたい  ……など。

「公開情報」欄には、

●アルカイダテキスト 家庭で出来る危険物

●やる気が出る薬を処方してもらいたい

●低身長が彼女を作るにはどうすればいいか知りたい  ……など。

「ゴシップ」欄

●ミスコリア2014入賞者が全員同じ顔

●全身青あざ・加護亜依逮捕夫とのDV地獄  ……など。

「アダルト」欄

●ラリのズルいAV ありきたりでないエロを求めて 欲情する上品妻

●リアル峰不二子の身体つき、安齋らら(宇都宮しをん)のヌード[26枚]

2次元:抜けそうなエロ画像集めた![33枚]  ……など。

「別れさせ屋」欄

●[実録現場]異性工作員が介入しないケース!

●[実録現場]ターゲットの表の顔と裏の顔  ……など。

 要するに普通の人が持ちそうな「金儲けをしたい」「いい女性とセックスしたい」「エロ動画を見たい」「業界人が知っている技術情報を門外漢の自分が知りたい」「世間の規制を法的、技術的に潜り抜けたい」といったある種の知識欲に応える情報が各種多数並べられているのだ。

 こうした「激裏情報」を主宰しているのが本堂マサヤ氏(45歳)である。

「激裏情報」は有料情報サイトとしてはネット最大規模で、年間1000通以上の裏情報を発信している。嘱託的な人員を含めスタッフが約50名。それぞれの分野で事情通やプロを揃えている。年間1万円を払う会員が約8000人。つまり基本収入だけで年商8000万円を上げる。

 参考までに「ちょっと稼いだ」と、数千万円の札束を積み上げる本堂氏の写真を見てほしい。何を見ているのか、横目づかいのしたり顔はまさしく成功者のものだろう。

座して儲けるやり方

「激裏情報」を含め本堂氏の事業の仕掛けについてはおいおい触れていくが、彼の成功理由は、普通の人がカネを払っても知りたいという情報の提供サイトをいち早く立ち上げたことにある。激裏情報の立ち上げはヤフーが日本で検索サイトを始めた半年後の9611月である。以来20年間、途中山あり谷ありだったものの、終始、競争の激しい業界で先行者利得的なリードを保ち続けて今に至っている。

 会ってみると、本堂氏は仕事好きで、遊び好きでもありそうな、ごく普通の40代である。取り立ててどこが優秀か、ぱっと見には窺わせない。

 1971年東京生まれ、小学4年のとき静岡に移った。父親は建築の設計会社に勤めるサラリーマンで、中学生のとき富士通のパソコンFM7を本堂氏に買い与えた。本堂氏はパソコンにはまって高校を中退。後に大検経由でバークレー大学に入り、MBA(経営学修士)を取った。

 高校中退後はぷらぷらしていたが、2022歳のころは静岡―東京間を往復して、渋谷のNCRなどでプログラマーをやっていた。

 当時はインターネットなどまだ存在せず、日本でホームページを立てている企業など存在すらしなかった。その後インターネットが普及するにつれ、ネット上の話題はもっぱらウェブサイトへの侵入や改ざんなどハッカーにあったが、本堂氏はそのころからハッカー技術より裏情報に興味を持っていた。

 三才ブックス発行の月刊誌「ラジオライフ」は危ない技術情報を扱うので有名だが、本堂氏も「ラジオライフ」の愛読者だった。インターネット上に「ラジオライフ」が扱うような情報を扱っているサイトがないか、アメリカのサイトまで探したが、まだモデムやISDN回線の時代で通信速度がめちゃくちゃ遅い。とうてい実用速度にはならず、探索できなかった。

 そこで見つからないなら、自分で作ろうと立ち上げたのが「激裏情報」である。創設当時はたかだか10ページ程度の中味だったから、作成も手直しも自分だけでこなせた。

「当初から年会費1万円で始めました。今もそうですが、ウェブサイトは無料が当たり前で、ボランティア的に成り立っていた。有料だと叩かれましたが、うちは裏情報なので、裏なら仕方ないか、とあまり攻撃されなかった。アダルトを見たい人はカネを出しても見たい。始めると会員が月に100人ずつ増えていく。かかる経費は知れたものだし、うちは赤字になる要素が最初からなかったんです」(本堂氏)

 情報の仕入れも自然発生的にたくまずしてうまくいった。つまり何かを知りたがる人は身近に何かを知っている人でもある。よって会員や入会希望者から情報をメールで提供してもらったのだ。

 たいていの情報には500円以上を提供する。その分積み立ててもらい、次の年の会費からその分を減額する方式である。狙いを定めた情報には10万円以上を出すこともあるそうだが、いわば座して儲けるやり方である。

 口の悪い顧問の中には「本堂さんは情報を右から左に流すだけ。それで儲かるのだから、やり方が太い」と、くさす声もある。

出会い系サイトの試み

 本堂氏は言葉を継ぐ。

「新規に仕事もやりましたが、そのために新たに借入を起こすことがない。すべて自己資金だから、失敗しても大損をこかない。わずかに失敗したといえば、同性愛者の出会い系サイトですかね。

 まだ出会い系という言葉さえなかったころ、出会い系を始めスパムメールをやったことがある。まだドコモのiモードのアドレスが[携帯電話の番号にマーク]という時代でしたから、090××××○○○○を0001から9999まで全部つぶせば誰かには届くと読める。

 それでスパムメールを出しまくりました。自サイトでも利用できましたし、返信があれば、それは業者が働きかけに使える生きた番号だから、それを拾ってアドレス・リストをつくる。売り出せば業者が喜んで買ってくれる。これはバカ売れしました。iモードへのスパムメールをやったのはたぶん私が最初だと思います。

 まだ物珍しいからほんとに使う人がいて、10万人サイトになった。男女比が73ぐらい。サクラなんかを使わず、ほんとに男女が出会える良心的なサイトになったんです。この月商が2000万~3000万円。運営にはアルバイトの子2人を使っただけでしたから、これは儲かりました。ドコモがiモードを始める時代、9899年ごろの話です」

 ここまではよかった。しかしネット上の栄枯盛衰は激しい。猫の目のようにすたりがある。本堂氏は考えた。男女をつなぐ出会い系サイトが成立するのだから、男と男をつなぐ出会い系の同性愛者版が成立するのではないか。聞けば、同性愛者の男はつねに次の男探しに苦労しているらしい。これだと思い、「ホモフレネット」を始めた。

 早速、男が男との交際を簡単に始められるサイトができたと勧誘するメールを出したわけだが、その気がない受け手側に反発を買った。気色が悪い、こんなものを送りつけるなとクレームが殺到したのだ。

「スタッフの中には誰も同性愛者がいなかったから、様子が分からない。頭だけの判断で始めてしまった失敗です」

ネットでの名誉毀損で逮捕

1999年には名誉毀損で逮捕もされてます。というのは、会員から『この女性に電話すると、やれます』という情報が寄せられた。それを確かめず、というか確かめることもできずに、その内容のまま会員に送信してしまった。まだ『ネットのことだから、何をやっても大目に見られる』という甘えもあったんです。ネットでの名誉毀損をなめていた。会員が4200人のころの話です」

 やれると書かれた女性は松戸市に住む会社員の女性(当時23歳)と千葉市の短大生(同20歳)だった。彼女たちの家には電話が殺到し、家族たちは応対にくたびれ果てた。誰がいい加減なことを言い始めたか、困惑も怒りもあったろう。もちろん電話は「激裏情報」の会員が掛けていた。

「お二人とご家族はさぞかし迷惑したでしょうが、実はうちのメールを受け取った一人にテレビ朝日の社員がいて、彼が被害者に接触し、『迷惑したでしょう、業者を警察に告発しなさい』と焚きつけたわけです」

 この事件について、朝日新聞千葉版(99117日付)は次のような見出しを立てて大きく報じている。

〈女性中傷の電子メール配信 容疑者逮捕 入会費1万円で「裏情報」 専門家「流出規制を」 「使用者の教育必要」の声も〉

 リードにはこうある。

〈女性の住所や電話番号にわいせつな文書を添えた電子メールを配信していたとして、インターネットの会員制ホームページの開設者が名誉毀損容疑で県警に摘発された。「中傷を交えた個人情報を、見ず知らずの他人の間でやり取りしていた。非常に悪質だ」と県警幹部は憤る。(略)〉

 この後に70行にも及ぶ本文記事が続くのだが、冒頭部分だけ引用してみよう。

〈「だれも知らないことを知りたい。だれも出来ないことが出来るようになりたい。なにがいけないのでしょう?」。県警組織犯罪対策本部と千葉西署が逮捕した本堂昌哉容疑者(27)=静岡県藤枝市=は、インターネット上に開設した「激裏情報」というホームページにこう書いて会員を募っていた。

 入会費は1万円。本堂容疑者は「交通違反の前科を消す方法」や「電気代をタダにする方法」といったものを「裏情報」と称して電子メールで連日配信していたほか、裏情報の買い取りもしていたという。〉

 これで本堂氏は懲役1年、執行猶予3年の刑を言い渡された。96年、彼は25歳で結婚し、子供が2人いた。奥さんは結婚前、銀行に勤め、堅く育っていた。彼女は本堂氏が堅気とヤクザの中間を行くようなグレーゾーンの仕事、激裏情報をやっていることは知らなかった。子供たちも同じである。が、この事件で勾留されたから、嫌でも本堂氏の仕事の性格を知ることになった。しかし救いは刑に執行猶予がついたことである。

第1章 「裏」情報サイトの先駆者【本堂マサヤ】(2)

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