日米が頼った大和魂の日系人弁護士
激動の20世紀に「二つの祖国」を生き抜いた男は、「大和魂」と「アメリカンスピリッツ」の狭間で何を考え、どう行動したのか。「堤清二『最後の肉声』」(「文藝春秋」掲載)で2016年(第47回)大宅壮一ノンフィクション賞(雑誌部門)を受賞した筆者の受賞第一作の大型評伝!

■迷走した東芝ココム事件

 そして、村瀬の存在を日本の産業史に刻むこととなる一大事件が起る。

 一九八七年(昭和六十二年)三月。日本経済はバブル経済のとば口に立っていた。首相の中曽根康弘が強烈なリーダーシップを発揮し誕生したNTT(日本電信電話)は、二月九日に株式を公開、初値が百六十万円だった株価は、四月二十二日には三百十八万円の最高値をつける。NTT株が牽引する形で、〝財テク〟ブームが起きる。円高、低金利、原油安は未曾有のカネ余りを生み、そのカネは株式や財テクに向かった。安田火災海上(現・損保ジャパン日本興亜)が五十三億円でゴッホの「ひまわり」を購入したのもこの年だった。十月十九日にブラックマンデーが起きたものの、一月…

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