私と同じ44歳の彼は、もうすぐ帰らぬ人となる。処刑まで、あと1カ月を切っていた
〈犯した罪の償いとして、死刑が存在する。それは、人間社会が決める善と悪の基準に則って、できる限り悪を排除するための慣習なのだと思う。しかし、その基準は、全世界共通でないばかりか、国や地域や町によっても異なる。理想や希望こそあれ、死刑に絶対的な答えはない。〉生殖医療、安楽死と「生と死」をテーマにし続けてきたジャーナリストが、世界各国を取材し、死刑の「なぜ」に迫る。

信憑性のない歯型鑑定

 ハワードは、歯型鑑定の犠牲者だった。現在は、この鑑定は司法の場での信憑性に欠けると言われている。二〇一六年、テキサス州の法科学委員会は、科学的に証明されるまで、法廷での歯型使用の中止を提案した。

 被害を受けたペロン夫妻と、そもそも面識がなかったハワードは、法歯学者らの研究を辛辣に評した。

「最初から、彼らが間違っていると思っていましたよ。起訴されて、深刻な事件に巻き込まれたと思いましたね。アラバマ州に有名な法歯学者がいるんです。彼らは、全米五〇州でずっと活動してきたんですよ。事件の証拠にはならないというのに」

 南部訛りの強い独特な話し方だった。しかも、人前で紙芝居を読んで聞…

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