私と同じ44歳の彼は、もうすぐ帰らぬ人となる。処刑まで、あと1カ月を切っていた
〈犯した罪の償いとして、死刑が存在する。それは、人間社会が決める善と悪の基準に則って、できる限り悪を排除するための慣習なのだと思う。しかし、その基準は、全世界共通でないばかりか、国や地域や町によっても異なる。理想や希望こそあれ、死刑に絶対的な答えはない。〉生殖医療、安楽死と「生と死」をテーマにし続けてきたジャーナリストが、世界各国を取材し、死刑の「なぜ」に迫る。

もう人生にストレスはありません

 ストレスを克服できず、凶悪殺人事件を起こしてしまったハメルに同情などしていいのだろうか。殺害方法はあまりに残酷で、私には想像できない人格の持ち主なのかもしれない。一部の証人は、彼を「善人」と語っているが、一部の証人は「悪魔」だと話している。だが、わずかな時間しか接していないが、彼から悪魔の匂いがまるでしてこなかった。

 全米でもっとも治安の悪い刑務所といわれるポランスキー刑務所で、死刑囚監房は、特に荒れているのではないか。ハメルは、ここに送られてきてから、本当に一度も問題を起こしていないのか。事件内容や死刑判決を考えると、もう一つの顔があるのかもしれない。

 再び、裁判資料をめくった。高校時代に…

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