私と同じ44歳の彼は、もうすぐ帰らぬ人となる。処刑まで、あと1カ月を切っていた
〈犯した罪の償いとして、死刑が存在する。それは、人間社会が決める善と悪の基準に則って、できる限り悪を排除するための慣習なのだと思う。しかし、その基準は、全世界共通でないばかりか、国や地域や町によっても異なる。理想や希望こそあれ、死刑に絶対的な答えはない。〉生殖医療、安楽死と「生と死」をテーマにし続けてきたジャーナリストが、世界各国を取材し、死刑の「なぜ」に迫る。

死の天使

 裁判では、被害者遺族の側に複数の弁護士がいた。そのうちの一人で、三家族の弁護に当たったジョルディ・コマからも、私は話を訊いた。彼はモンギロードとは反対の立場で、ビラの人柄や犯行について、もっと冷ややかな見方を示していた。

「ジョアン・ビラは、神経質で不安を抱え、自尊心に欠ける男だったと思います。友人は少なく、社会との交流もほとんどなかった。世間から冷遇されてきたことで、彼独自の世界観を造り上げていったのでしょう」

 そのビラは殺人者である。が、一般の人々は、「なかなかそう思うことができない」と、コマは言った。

「世間は、彼が精神疾患者だったと考えています。つまり、社会的に共感できる部分はな…

無料公開中のページへ
01